禅宗の寺院建築などによく見られる放射状に配置された垂木を扇垂木という。通常は棟木に対して直角に渡す平行垂木が一般的である。鎌倉時代、大仏様(だいぶつよう)と禅宗様(ぜんしゅうよう)の導入とともに社寺建築に用いられるようになり、大仏様では隅扇と呼ばれる隅の近くだけ放射線状にされる。禅宗様では軒全体にわたって放射線に配列される。

現在の平行垂木は、配付け垂木(隅木の側面につけた垂木)の部分は屋根の荷重が隅木に集中し垂木は構造上役に立たないが、この部分の垂木を放射状にすれば荷重は垂木にも掛かり、最終的に桁で受けることができるため、昔の寄棟屋根では構造上、扇垂木の使用はごく自然に使われていたが現在はやはり手間がかかるためあまり見ることはない。


写真は三津の厳島神社の参拝門の屋根垂木。