今と昔の住まい方の違いについて、



伝統構法の建物の生活様式を簡潔に述べるなら、
就寝一体
お客様中心ということになる。

就寝一体とは、就寝分離の対義語として実は作った言葉である。
就寝分離は寝食分離ともいい、睡眠を取る場所や団欒、家内仕事などをおのおのの部屋で分ける事や、親と子や、男女で部屋を別にして寝ることで、戦後、欧米の個人主義の考えと共に就寝分離の考えで間取りが変化した。

対して伝統構法は和室を思い出すと理解しやすいが、
畳の部屋でちゃぶ台を出して食事をとり、家族団欒を行い、寝る場合にはちゃぶ台を片付けて押入れから布団をだしてみんなで川の字で寝る。ひとつの部屋で重複した行為を行っており、和室はその用途に向いていたのである。

お客様中心の間取りとは古民家解體新書Ⅱの43Pから壱の十 農家住宅を見ていただきたのだが、そこに田の字の間取りを説明している。田の字の間取りは日本固有の間取りであり、間取りとしての原点でもある。各スペースを機能により固定化しその中でもオモテの部分がお客様が来られた時のみに使用する場所となる。このオモテ部分は庭が眺められて日当たりのいい一番いい場所に最も内装などにも趣向を凝らし予算をかけて作られた場所となる。オモテには床の間があり畳が敷かれた。畳は通常は収納しており、お客様が来られた時だけ敷いていたようである。

また玄関もオモテに作られるが、玄関はお客様と家の家長のみが使用でき、その他のものは土間や台所の勝手口から出入りしていた。お客様第一の家づくりだったのである。まさに日本のおもてなし文化の原点かもしれない。