古民家再生は大きく分類すると4つの方法があります。それぞれに一長一短があり、どれが正解というわけではありませんので、古民家のコンディションや希望、コストなどを検討してどれを選択するか初期の段階で慎重に選んでいく必要があります。

$「こだわり」の建築士日記 

A.現地再生
現地再生は現在古民家が建っている場所でそのまま再生する方法です。建物の傷みや再生後の住まい方、間取りによって工事の内容は大きく変わります。一度建物をすべて解体して造り直す場合もあれば、簡単なリフォーム程度で済ます場合もあります。コストを考えるなら現状を残しながら半分程度解体して修復する方法が多いと思います。基本的な構造を変えずに建物の歪みなどを修正、腐った部分の交換や補修を行います。構造をさわらないので仕口などを加工する工事を減らすことで工事の期間もコストも抑えることができます。建物を解体せずに建物全体を浮かせる嵩上げ(かさあげ)や横方向に移動する曳家(ひきや)を行う事もあります。

B.移築再生
解体した民家を別の場所に運搬して組み立て直す事をいいます。一度全てを解体して構造体のほとんどの部分を使用して、なお且つ建物の場所を別の土地に移動して再生する事です。移動する建物は敷地の条件や間取りによっては一部を削ったり、増築したりする事も多く、この場合には建物全体の整合性を確認し、歪みを修復したりしながらバランスを見るために、事前に仮組み(建前以前に梁組を中心に試験的に組み立てる)を行う場合が多いです。移築再生では建築基準法をクリアするために従来はなかった筋交いや金物を使用し基礎などを新たに作る事も必要で、すべて昔のままで再生するのではなく、新しい技術を取り入れたりライフスタイルに合わせた間取りや設備などの設計を行う事を検討していきます。

C.部分再生
部分再生は移築再生の一つですが、敷地の関係などから新築と組み合わせたりして部屋単位で移築再生する事を言います。古民家部分が多い場合もあれば、新築のほんの一部だけを古いものを利用するなど様々な形が考えられます。

D.古材利用
古材利用は解体された建物の梁や柱などを新築住宅の部材として使用したり、別の建物の古材を組み合わせて1軒の建物を建築したりする事で、仕口の加工は新しく行う必要がありますが、予算に合わせて柔軟に取り組めますし、たとえば洋風の住宅で1本だけ古材を入れたりなど構造的に古材を使ったり、デザイン性で構造とは関係なく使用したりといろいろ楽しめますので一番簡単に誰でも利用できます。私もハウスメーカーで建てられた建物などに古材を使いたいと言われて提案させていただいたりもします。