今回は、
【病院側からよくある質問(第2弾)】
を解説していきます。
前回は、
病院側からよくある質問の【第1弾】
として、
病院側の謝罪の仕方について解説をしました。
前回の記事
今回は、
病院側からよくある質問の第2弾として、
以下の質問について解説していきます。
病院側からよくある質問②
医療事故やトラブルが起きた時、
患者側や、
患者側の弁護士から、
カルテの開示請求された場合、
速やかに開示すべき
弁護士からの回答
速やかに開示した方が良いケースが多い。
しかし、
開示義務のない場合もあるため、
マニュアルの策定をすべき。
カルテ開示は、
トラブルや医療事故の時に多いですが、
不妊治療クリニックでは、
転院で凍結胚、凍結精子などの移送が必要な時に、
凍結胚の評価・グレードなどの情報の提供を、
カルテや医療記録の開示という形で、
求められるケースがあります。
(通常は紹介状という形で、
診療情報提供を行うかと思いますが、
患者側の転院がトラブルを伴うものである場合で、カルテ・医療情報の開示の請求を行うなどのケースも存在します。)
そして、多くのケースでは、
病院側としては、
患者側の求めに応じて、
所定の手続きに従って、
患者側に対して医療記録を開示した方が良いでしょう。
理由
理由①・・・
患者側とトラブル等が発生しているケースでは、
仮に病院側から、
記録の開示を行わなかったとしても、
患者側から所定の手続きを経て、
結局開示が必要になるケースが多いからです。
具体的には、
患者側が裁判所を通じた、
「証拠保全」の手続き
を行うと、
ある日突然病院に裁判所の執行官等が来て、
その場でカルテの開示を求められる、
といった事態が発生することがあります。
その場合、病院側としては、
他患者への影響や評判に直結するリスクがあり、
さらには職員側が通常業務に加えて、
これへの対応に追われて業務に支障が生じる、
という多大な負担がかかることもあります。
この証拠保全の手続きは、
無条件に認められるわけではありませんが、
病院側としては、医療記録の開示を拒むと、
このようなリスクがあるということは認識しておく必要があります。
理由の2つ目と3つ目(②、③)として、
まず、開示をしたことにより、患者側が、
患者側の弁護士や医師等と記録を検討した結果、
裁判で病院側の責任の証明が難しいと判断するケースもあります。
この場合、患者側としては、請求自体を諦めるか、
あるいは、病院側との交渉段階で解決をしようとすることになります。
しかし、病院側が、記録の開示を拒んでしまうと、
患者側としては、記録の検討をするために、
裁判手続きなどを行う必要に迫られるため、
裁判手続きに伴う費用負担や労力等が発生します。
そうすると、
患者側との話し合いで解決できる可能性が減り、
紛争が激化する(裁判になる)ことがあります。
以上の通り、基本的には、
病院側は、
医療記録を開示した方が良いケースが多いであろうと思われます。
なお、
医療記録の開示に関しては、
厚生労働省から、
「診療情報の提供等に関する指針」という方針が示されています。
実際には、多くの医療機関はこれに従って運用しているものと思います。
この指針の中では、
「診療情報の提供を拒みうる場合」として、
「第三者の利益を害するおそれがあるとき」や、
「患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるとき」
などが記載されています。
もっとも、
実際のケースごとに、病院側で、
このケースは開示して良いのかどうか、
開示するとしても一部分のみの開示とするのか、
全部の開示とするのか、
などを、個別に判断するのは、
負担になることも多いです。
可能な限り、病院側としては、事前に、
医療記録に関する開示の「運用マニュアル」を策定しておくべきでしょう。
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