平成2年に栃木県足利市で当時4歳の女児が殺害された「足利事件」で、再審無罪となった菅(すが)家(や)利和さん(63)を真犯人とした捜査の問題点について、警察庁は1日、当時最新の科学捜査手法だったDNA型鑑定を過大評価したあまり、先入観による取り調べから菅家さんを追い込んで虚偽の供述を引き出し、自白内容の裏付けや信用性の確認も不十分だった-などとする検証結果を公表。捜査全般を「客観的証拠に乏しく『自白』に大きく依拠した捜査」と総括した。

  [フォト]無罪が確定し、支援者と抱き合う菅家利和さん

 足利事件の捜査の検証をめぐっては、警察庁と栃木県警が昨年6月、それぞれ調査検討チームを設置。連携しながら捜査資料などを精査したほか、事件発生時と菅家さんの逮捕当時の警察庁捜査1課長や、栃木県警本部長ら幹部を含む捜査関係者約20人から事情を聴くなどしてきた。菅家さんにも要請したが、聞き取り調査はできていない。

 検証結果では、菅家さんを犯人と決めつけた捜査の問題点としてまず、DNA型鑑定を過大に評価していたことを指摘。当時のDNA型鑑定の個人識別力(1000人中1・2人)に対する正確な理解が不十分のまま、菅家さんを犯人とする誤った先入観をもって取り調べを続け、「虚偽自白に追い込んだ」とした。

 また、菅家さんが取調官の期待に沿った供述をする「迎合」しやすい性格である可能性に対する留意が欠如していたことにも言及。

 DNA型鑑定への過剰な信頼や、「犯人でなければ重要凶悪事件を自供するはずがない」との思いこみから、「(取調官が)期待する供述が得られるまで繰り返し質問したりする取り調べが虚偽供述につながった」と結論づけた。

 一方、捜査本部の統括役である捜査主任官が取調官を兼務していた事実に触れ、菅家さんの供述と、捜査で得られた客観的事実の裏付け結果との整合性や、矛盾点について、いずれも吟味が「不徹底だった」と分析している。

 捜査に誤った予断を与えることになったDNA型鑑定では、「当時定められた手順で実施されたものと認められる」としたが、わずか190人分のサンプル数から算出した内部データであり、科学的には「参考程度」のものだった。

 また、保管しておくべき鑑定記録の紛失にも言及。解析画像8枚のうち5枚の所在が分からず、ネガフィルムもなかったため、「残された鑑定記録とは矛盾しないという以上の検証結果は得られなかった」という。

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