先日、ボートレーサー・本吉正樹(まさじ=58)にスポットをあてた、
「レーサーの家」(平山譲著、駒草出版)という本を読みました。
本吉正樹は1987年11月デビュー、今年38年目のベテランで、
私のような昭和から競艇に慣れ親しんでいるファンにはおなじみの選手。
あくまで私見ですが、
本吉選手を端的に表現すれば「ファンを裏切らない選手」。
「ファンを裏切らない選手」とは、
常に真摯に、誠実に、死力を尽くしてレースに臨んでくれる選手のこと。
勝負は時の運ですから、勝つこともあれば負けることもあります。
ただ、「プロ」と呼ばれる選手として最も大切なのは、
「勝っても負けても納得のいくレースをしてくれる選手」
であることは言うまでもありません。
いくら強くても、ファンが納得いかないレースを繰り返すような選手は、
個人的にプロとは認めません。
逆に、
年齢や技量から、なかなか勝てない選手でも、
常に全力で、ひとつでも上の着順を目指し、一走入魂の走りを続けている選手は、
勝率に関係なく「プロフェッショナル」です。
本吉選手は87年11月のデビューからずっと見てきていますが、
舟券という形で選手の生活を支えるファンの存在を片時も忘れず、
最大限、ファンに礼儀を尽くしたレースを常に心がける選手。
仮に負けても、「ベストを尽くした」と思わせるレースを見せてくれる選手。
それが本吉正樹選手のプロとしての生き様で、まさに「プロフェッショナル」。
引退した同じ東京支部の岩谷真さんもそうでしたが、
本吉選手は東京支部のベテランでも特にリスペクトしている選手です。
本には、本吉選手の崖っぷち(引退勧告寸前)のレーサー人生や、
大切な家族などにも触れられていますが、
何よりも心に刺さったのは、師匠の桑原淳一さんの弟子に向けられた本音。
「俺は、ぜったいに、いえるんだよ。おまえが、生き残れたのは、奇跡のおかげなんかじゃない。おまえが、生き残れたのは、長年の、一生懸命さが、報われただけなんだよ。その一生懸命さが、誰にも真似ができない、おまえの、素晴らしい、才能なんだよ」
一生懸命に努力できること─
これが人間の能力の中でも特に大事な能力だと思っています。
本吉正樹選手の一生懸命さもさることながら、
桑原淳一さんという最高の師匠に恵まれたことが、
彼のボートレース人生の最大の幸運だったのかもしれません。
1990年代、競艇(現ボートレース)記者として取材していた頃、
海千山千のこわもてが多い中、
どんな時でも笑顔で真摯に取材対応してくださったのが桑原淳一さん。
時にぶしつけな取材もあったと思われますが、
決して感情的になることなく、笑顔で諭すように対応していた姿が思い浮かびます。
そんな素晴らしい師匠に巡り合えたからこそ、
本吉選手は58歳の今も、現役のボートレーサーとして、
また、
「ファンを裏切らない」走りができるプロフェッショナルとして、
一走入魂の走りを続けているものと確信しています。
本吉選手もそうですが、
今も現役でいるベテランレーサーの全盛期を知る我々オールドファンは、
彼らがもう一花咲かせてくれることを願っています。
彼らの活躍が、我々の生きる活力にもなりますから😀