「ギャンブル→旅打ち→夜の街」

とくれば、ほとんどの場合、

 

「金欠→借金→自転車操業」

という方程式が成立する。

 

 

まだ学生時代は、バイト、奨学金、質屋通いという、まっとう? な範囲で軍資金をやり繰りしていたが、社会人になると、リミッターが一気に弾けてしまう。

 

 

 

最初に借金に手を染めたのは、平成になった直後、22歳の頃だった。

 

20歳前後の若者や学生の登竜門と言われた「丸●の赤いカード」や「学生ローン」とは無縁だったが、某スポーツ紙に入社し、レース部に配属されると、金策の必要性に駆られることになる。

 

 

 

今でも鮮明に覚えている。

 

川口オートで有り金すべてを溶かし、ポンコツのカローラで帰る途中、蕨駅前の交差点で信号待ちをしいた時、カラフルな色の看板が目に入った。

 

当時、女性タレントや独自のキャラクターを起用し、派手にCMを打っていたサラ金(消費者金融)だ。

 

蕨駅の交差点で、車を発進させていれば、違った人生になっていたかもしれない。

 

が、何かに引き寄せられるように、車を路駐し、看板が掲げられたビルに入っていった。

 

余談だが、当時は路上駐車が当たり前で、有料駐車場を利用する習慣がなかった、と記憶している。

 

 

 

初めて入った消費者金融は、赤い色の看板の「ア●ム」だった。

 

確か、当時は自動契約機などなかったと思う。

 

恐る恐る店舗のガラスのドアを開けると、3人の女性が満面笑みで待ち構えていた。

 

そのうちの1人が、ぽっちゃり型で、笑顔が素敵な女性だった。

 

恐縮ながら、好みのタイプの女性で、店員の指示を待つまでもなく、笑顔が素敵な女性が座る窓口に直行した。

 

 

 

 

生まれて初めての借金経験だから、われながら緊張していたのだと思う。

 

風俗店の客がよく口にしそうな、「こういうお店、初めてなんですけど…」という決まり文句が、私の第一声だった。

 

笑顔が素敵な女性は、巧みに会話を合わせつつ、満面笑みでキャッシングの説明に入っていった。

 

 

 

人は誰でも、金に困っている空気を漂わせたくない、のは人情だろう。

 

まして、窓口で対面しているのは、ぽっちゃり型で何ともかわいらしい、ドンピシャ、好みの女性だ。

 

 

それゆえ、「10万もあれば十分です」と、必死に"金に困っていないオーラ"を出していたと思うが、その手の店に行くこと自体、金に困っている証拠だから、格好つけても仕方ない。

 

さらに、「お客様でしたら50万円まで可能ですよ」という想定外の返答に、「じゃ50万で!」と思わず声を弾ませた。

 

"金に困っているオーラ"全開だったに違いない。

 

 

 

 

契約は驚くほど簡単で、数点の書類にボールペンで記入し、身分証明として免許証と保険証を提示しただけ。

 

笑顔の素敵な女性は、それらを持って、奥の管理職らしき男性のところへ行くと、わずか数分後に、満面笑みで戻ってきた。

 

 

そして窓口に戻ってくると、「このカードで50万円まで引き出せます。宜しければ、あちらのATMをご利用ください」と、50万円の限度額が太字で印字された契約書と、ア●ムのカードを手渡してきた。

 

窓口の3人の女性と、後ろの管理職らしき男性社員の熱視線を背中に感じながら、とりあえず10万円だけATMでおろし、蕨駅前のサラ金ビルを後にした。

 

 

 

もう30年以上も前の話しだが、人生初の借金体験、サラ金利用のシーンは、今でも鮮明に覚えている。

 

それ以降は、サラ金で借りることが生活の一部となってしまい、どこでどう借りたか、ということも含め、ほとんど記憶に残っていません。慣れとは怖いものです。

 

 

 

ということで、「初めてのア●ム」で10万円を手にして向かった先は、一度行ってみたいと思っていた、西川口の高級ソ●プ店。

 

店先に待機するスタッフからして、どこか品を感じさせるような高級店だった。

 

入浴料とサービス料込みで5万円は、当時の西川口では最も高い価格設定だったと思う。

 

今では、朝に食べたものも忘れるほど、記憶力は怪しいが、蕨駅前ア●ムでの借金初体験、そして西川口の高級ソ●プ店での記憶は、今も鮮明に残っているから不思議だ。

 

写真で指名させていただいたのは、ア●ムの窓口にいた女性に似た、ぽっちゃり型のかわいい方だった。

 

高級店ならではの、120分というロングタイムにフル稼働し、二度三度と昇天したことを、最後に付け加えておきたい。

 

 

 

明日をも知れぬ弱小ライター稼業で、3人の家族を養う身の今では、5万もの大金を、たった120分間の"昇天"時間に消費する発想など、どこにもない。

 

が、当時は、日々バクチを打つため、また夜の街でも打つ(発射する)ため、後先考えず、金策に奔走した。

 

若さとは、いや後先考えない性格とは、何とも怖く、罪深いものだ。

 

こうして借金は雪だるま的に増えていった。

 

(続く)