文芸トークサロン、“中国文学の「いま」~世界でもっともアツい超出版大国の現状リポート”へ行ってきました。

ゲストは翻訳家の泉 京鹿さんです。

 

泉さんは40代の若い方で、見た目も語り口もバイタリティあふれるそばにいると元気がでるような方でした!

大学卒業後(中国語科ではない)北京に留学し、そのまま約16年北京で働いていたそうです。

翻訳をするきっかけはかの毛丹青氏に背中を押されたからとの事。

余華の『兄弟』や、『水の彼方~Double Mono~』(田原・著)、『悲しみは逆流して河になる』(郭敬明・著)等々たくさんの作品があります。

私は1冊も読んだことないのですが、タイトルは知っているものばかり。

機会があったら日本語訳も読んでみたいです。

 

色々お話いただいた中で印象的だったことを。

 

 

1.中国国内で日本の翻訳本の出版数がものすごく多い

 

 

グラフを見せていただきましたが、日本国内で出版される中国本の10倍くらいありました。(もっとかな?)

日本でベストセラーになったものや、話題になった本は多くの出版社が版権をもらおうと殺到するそうです。

又吉直樹氏の「火花」はなんと18社で入札だったとか!

 

なぜうけるか?(特に若者に)

身近でありながら、ちょっと違うぞ?という表現できない感覚を言葉にしてくれるのが響くのかも、とのこと。

村上春樹氏など、「ああ、これこれ、この感じを今まで誰も言葉にしてなかった!」と。

 

それからプロモーションも上手らしいです。

最近急に人気上昇している小川洋子氏の作品は、大手出版社が版権をとって作家に配りまくったり、書店に並べたりしているそう。

余華氏は、中島京子氏の『小さいおうち』を大絶賛して猛烈売込みしてるとか(笑)

 

 

2.中国の翻訳本市場として一番難しいのは日本

 

 

欧米でも中国の翻訳本はかなり読まれているが、日本では出版数も少なく読む人も少ないのが現状。

 

(理由)

① 訳者、校閲者、出版社のクオリティの高さ

 

欧米他では原文の語句間違いや時制の違いなどは勝手に直してしまうが、日本では必ず作者に確認する。

どんな小さなことでも確認するので、とにかく時間がかかる。

装丁も丁寧で美しいものにする。

したがって価格が高くなる。

 

② おすすめ作品があっても出版社のGOがなかなかでない

 

作者の知名度がない、今中国で売れていても翻訳本が出るころには賞味期限になるのでは?

また中国語を日本語にすると約1.5倍くらいの量になり、中編・長編はかなり厚くなるので敬遠されがち。価格も高くなる。

 

③ そもそも中国文学に興味を持たない

 

映画公開と同時に出版したりすればいくらかは売れるが、平常では興味を持つ人が少ない。

プロモーションとして芸能人などに紹介してもらえば売れそう。(この前又吉直樹氏が「歩道橋の魔術師」紹介してたね~♪)

 

 

3.作者の表現の自由について

 

中国国内の文章に対する規制・検閲はどんどん厳しくなっている。

作者自身ではなく出版社に罰が与えられるので、編集者の自主規制が必須。

だがそのラインが明文化されていないので、つぶされたり、減給されたり、今後雑誌が出版できないようにされたりする出版社が出てきているとのこと。

今は台湾や香港で出版することがトレンドになっている。(香港は最近大陸からの規制が入るようになり台湾が今のところ安全)

 

他に、質問コーナーで「どうしたら中国のコンテンツを日本に広めることができるのか?」というのも面白かった。

韓流ブームみたいなことにならないのはなぜか?

「中国のヨン様がいないから」って!!!w

 

琅琊榜はじめ、中国ドラマのイケメンはよく見ると韓国明星よりもきれいな顔が多いしかっこいい。

でも、なぜか現代劇になるとイケメン度が下がるとか、表情が今一つとか、もう色々思い当たって笑えました。

(わたくし的には、コアなファンは韓流ブームみたいにキャーキャーされたくないってのも理由のひとつじゃないかと・・)

 

中国の文芸翻訳者は人手不足なので、やりたい人は大歓迎!だそうですよ。

中国の素晴らしい本を日本に紹介したいという情熱があれば、企画書を作ってどんどん出版社に売り込んでくださいとのことです。

儲からないらしいけど・・(笑)

 

楽しそう。私はホラー短編集を翻訳して自分のコレクションにしようっと。ドクロ

 

トークサロンは初めてでしたが、話者と参加者の距離が近く、参加者の人数も適度でゆったり聴くことができました。

なんとフリードリンクに酒類が!(ビール、ワイン、シャンパン、紹興酒・・・おつまみも)

びっくりしちゃった。

もちろん品行方正の私はいろはすの水をいただきました。

また機会があったら参加したいと思います。