大人の事情に振り回されて、
あまりに可哀相な運命を背負った薫ちゃん、
もちろん誘拐は犯罪だけど、
間違いなく言えることは、
薫ちゃんは、
みんなに愛されて育ったこと
希和子も、久美の母親も、文治や、島のみんなからも、
本当に愛されて育った
突然、大好きだった母親と引き離され、
大好きだった島を離れ、
全く違う環境で、違う家で、
知らない両親のもとで
生活をすることになった少女
あの日まで、島の子供として生きていた
愛されて、楽しい毎日だったからこそ、
大好きな島だったからこそ、
島でのしあわせな毎日があったからこそ、
その現実はつらく残酷だったと思う
どれだけつらく、
どれだけ寂しい思いを抱えて育っただろう
両親からしても、
娘が5歳になって再会するあの時まで、
実の娘なのに、それまでの時間は空白の時間
両親にとっても、娘を誘拐されてからは、
苦悩の連続だっただろう
娘が戻っても、実の娘ながら、
そこからもまた苦悩の連続だっただろう
普通の親子のようにはいかないことばかりだっただろう
それでも両親が娘を育て上げたのは、
彼女が娘として愛されていたからだし、
空白の時間は消えないし、
時間は戻らないし、
取り返しはつかないけど、
彼女が愛されて育ったことは、
本当だと思う
薫は本当は恵理菜という名前だった
彼女は、希和子と同じように、
妻がいる男の子供を妊娠していた
そして男の妻も妊娠していた
そう、希和子と同じ状況だった
出産して、子育てを経験したら、
きっと自分を育てた希和子の思い、
また、実の母親の思い、
どちらも感じられるんじゃないかな、
と思った
こんな思いで自分を育ててくれたのかな、とか
あの時こんな思いだったのかな、とか
そんな瞬間がいくつもある気がする
実際、母親だけじゃなく、
たくさんの人が希和子と薫を助け、
支えてくれて、薫は育った
子供って、というか、
人って、
いろんな誰かに支えられながら
成長するんだなって感じた

