先日、知人の紹介で参加したセミナーで、
セカンドライフで起業に成功したFさん
の講演を聞いた。
Fさんは、大手電機メーカーの
現役営業部長だった時から
定年退職後の起業準備を始め、
実際に苦労の末に起業して
成功を収めた人である。
Fさんは56歳の時、
自身のキャリアとは全く異質な
美容師になることを決意し、
猛勉強で資格を取得した。
現役サラリーマンだったため、
美容師資格は通信教育で学んだが、
美容師試験受験に至るまでには、
2年間の教習課程の中で年十日の実習
スクーリングがあり、
さらにその後一年間のインターン経験を
積まなくてはならない。
サラリーマン稼業の片手間では、
とても受験そのものが困難な資格だ。
スクーリングは会社の制度休暇などを
利用してなんとか切り抜けたが、
インターン実習はそうはいかない。
結果、学校の特別な計らいで
とある美容室で実習をすることになり、
年間のすべての土日祝日をそれに充て、
さらに実技経験の不足を平日の
退社後深夜までの時間を使って学んだ。
そこまでしながらも
中高年者に実技の壁は厚く、
合格したのは三回目の受験だった。
その後美容室を開業しようとしたが、
若い美容師たちに混じって60歳過ぎの
美容師に客が付くだろうかと懐疑的になり
ずい分と悩んだという。
しかし別の資格として勉強を始めた
ホームヘルパー2級の実習での経験が
転機となった。
実習で老人福祉施設に行った時、
出張美容師が女性の入所者にも
無造作にバリカンをあてているのを見た瞬間だ。
Fさんは、以前に読んだ、
「施設の無表情だったお年寄りが、
お化粧をしてもらって生き生きと輝いた」
という記事を思い出したのだ。
満たされていない顧客のニーズ、
自分自身の起業理念と使命感が一致し、
自分の進むべき道を悟った。
Fさんは、高齢者やハンディキャップがあって
美容室に通いたくても通えない人に
特化した美容室を起業した。
業態としては、
無料送迎でお客の自宅から店まで運ぶ
送迎美容と、
お客の自宅や施設に出向いて
調髪をする出張美容である。
法律で、このような美容形態は
要介護者か施設入居者が利用する
場合に限られており、
従来はほとんど対応している
美容室が無かったそうである。
起業後、様々な試練を乗り越え、
12年経った現在は、
一都3県で複数店舗を展開、
会社は所属美容師45名になる
までに成長した。
氏の話で感銘を受けたのは、
あえて自分の過去のキャリアに
無いことにトライし成功したこと
楽な道はいくらでも選べたのに
あえて茨の道を選びやり通したこと
志のために日常的な付き合い、
趣味すべてを封印してフォーカスしたこと
美容室を利用したくても出来ない人に
喜びを届けることを理念とし、
すべてをそこに集約していること
である。
Fさんのようなハードなセカンドライフは、
誰もが目指すべき道ではないと思うし、
楽な道を選ぶ選択もまた正しいと思う。
だが、世の中にはこんな人もいるということは
とても人の励みになることである。