前回の続き
ゴサクが「そうですか。じゃあ、いただきます。」と言うと、正平は思い出したように「あ、砂糖無いんだ。すいません、無いです。」と言った。越して来たばかりで調味料はまだ何も無いのだった。ゴサクは「それっていうのは、いつある物なんですか?」と聞いた。正平はブラックコーヒーをすすりながら「まあ、買った時ですね。」と笑顔で答えた。正平にとっては、ゴサクのようにチョンマゲを結ってまで農業に盲従する男がコーヒーや砂糖を知らなくても、何らおかしな事ではなかった。(チョンマゲが現代では違法な事も彼は知らない。)そして正平は爽やかな調子で、「あの、座布団は知ってます?」とゴサクに尋ねた。ゴサクも爽やかに「あ、はい。知ってます。」と答えた。正平は傍らに積んであった一つをつかみ、ゴサクに差し出して言った。「よかったらこれどうぞ。床じゃ固いでしょ?」ゴサクは「ありがとうございます。」と言って座布団を受け取って座ろうとしたが、座った瞬間にピョーンと飛び上がってしまった。
続く