他人物売買 | 広島人サガカオリの ~欲張り司法書士ライフ~

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広島市で司法書士行政書士事務所を開業しています。
毎日をもっともっと丁寧に過ごすために開設したブログです。
お仕事のこと、育児のことなど含め日々の生活の中で気づいたこといろいろ、ゆっくり更新したいと思います。

みなさんこんにちは!

サガカオリです

いつもありがとうございます。

 

今日は穏やかな秋晴れ。

気持ち良いですね~

 

さて、世間を騒がせている

神奈川県から個人情報を含む
行政データが蓄積されたハードディスク

ドライブが違法に持ち出され流出し、

さらにネットオークション等で売却されていた

というニュース。

 

すごいですね、

その個数が半端ない。

新聞報道によれば

HDD、USBメモリーなど

合計3904個だそうです。

 

ひゃー・・・

どんだけ・・・ガーン

 

 

これはもちろん犯罪行為です。

刑法でいくと、窃盗罪。

会社の所有物を盗み出した罪。

 

それはそうなんですが

 

もしかして

知らずにそれを買ってしまってたら

どうしよう・・・

 

とか、思った人いませんか?

 

ネットオークションサイトでは

出品者情報は非公開のまま

売買が成立できる仕組みなので

 

普通にサイトから入って

購入していたとして、

例えばそのUSBメモリが

実はこの容疑者が持ち出して違法に
出品していたものだったりして・・・

分かりませんよね。

 

その場合、自分は

犯罪に加担したことになるのだろうか?

いやいや、

知らなかったんだから悪くないか

もしその商品を自分が転売していたら?

盗品を転売してお金(利益)を得たという

ことになるので、
これって犯罪になるの?

 

これは刑法の問題。

刑法に定める犯罪の構成要件に該当

する事実があるか

違法性はあるか、などで

判断されることになります。

 

 

 

これとは別次元で
民事上の問題もあります。

 

盗品であることを知らずに
ネットオークションで購入した人

知らなかったんだから悪くないでしょう?
 

でももしそうだったとして、
返品しろとか言われることがある?

代金は払ったのにどうなるの?

 

 

容疑者が出品し、売却したものが

盗品であるということは、その人の

所有物ではなかったわけなので

民法でいうところの

他人物売買といえそうです。

 

民法560条

他人の権利を売買の目的としたときは、

売主は、その権利を取得して買主に

移転する義務を負う。

 

さらに

民法561条

前条の場合において、売主がその

売却した権利を取得して買主に移転する

ことができないときは、買主は契約の解除

をすることができる。

この場合において、契約の時においてその

権利が売主に属しないことを知っていた時は

損害賠償の請求をすることができない。

 

つまり、

他人物を売却して代金を受け取った売主は

その商品の所有権を取得して買主に移転

する義務を負っています。

当然のことって感じしますよね。

 

で、それが出来なかった場合には、

買主は契約を解除できる。

つまり、契約がなかった状態に戻すこと

商品を返品して代金を返してもらうという

ことです。

 

さらに、

その商品が売主のものでないと買主が

知らなかった場合には、損害賠償請求できる

ということになります。

 

つまり、ヤフオクなどで、容疑者から

商品を購入してしまっていた人は、他人物

だったことを知っていても知らなくても

少なくとも、商品を返品して、代金の返金を

請求できるということかと思います。

 

ただ、もしその買主がこれをさらに転売して

しまっていたとしたら、転売した相手買主から

同様の請求がされる可能性があることに

なります。

 

またその際には民法562条についても

関係がありそう。

長くなるので、気になる方は、この条文も
チェックしておいてくださいね。

 

この事件

ネットオークションでの売主買主の関係

だけでもこんな感じにややこしいですが、

そのほかにも様々な法律関係が絡んで

いそうです。

 

ヤフオクでその商品を買ってしまった自分が

神奈川県から何か言われることは無いのか?

 

これは多分、なさそう・・・

 

神奈川県と法律関係にあるのは、

HDDなどの廃棄を依頼した相手会社である

ブロードリンク。

神奈川県は、処理費用を支払ったうえで、

物品の適切な処理と廃棄を依頼したのに

ブロードリンクはその契約上の義務を怠った。

債務不履行といえるでしょう。

損害賠償請求もできますが、その損害が

どのように算定されるのか、難しいですね。

個人の情報を流出させたことによる損害額

なんて、計算できるものではないでしょうし。

 

では、ブロードリンクと容疑者はどうか。

容疑者はブロードリンクから

労働対価(給料)を受け取ったのに

その業務命令に従わず、さらに、

ブロードリンクの所有となっていた

廃棄処分用の物品を盗み出し、

自己のものとして売却し利益を得た。

 

それでは大量の個人情報の流出を

許してしまった神奈川県には

問題はないのか。

 

やはりそこは、

神奈川県側にも責任はあるでしょう。

個人情報の適切な管理を行う責任上

管理体制に問題はなかったのか、

委託する相手方業者の選別や依頼に

関わる関係などは問題はなかったのか

など、これは情報を流出された被害者に

対して説明をし、被害が発生しているので

あれば誠意ある対応が求められるでしょう。

 

あとは、もし自分がネットでその商品を買って

しまっていたとしたら、そんな自分に対して、

誰か何か言ってくることがあるのかどうか

 

本来なら、盗品を売ってしまった容疑者が、

受け取った代金を返金するので商品を

返してほしいというのが、形としては

正しいと思いますが、

 

なにせ容疑者は逮捕されていますし、
商品の数が膨大ですし、

これをいちいち返金して返品を受けるという

ことができるのかどうか。

つまり、返金できるかどうか。

その作業が行えるかどうか。


対して、

ブロードリンクは容疑者の所属した会社であり

容疑者に対して監督責任があったことを思えば、

ブロードリンクがその責任を果たすという意味で

代金を返金するのでと商品を回収するということも

無いことはないと思いますが、数が数だけに

現実的に、これを行おうとすると大変なことに

なってしまいます。

果たしてそこまでやるのかどうか・・・

 

そして、

それらの責任(損害)は結局すべてが

容疑者の負担となるわけですが、

それが弁済されることがあるのかどうか。

 

民事の問題だけでも、こんなふうに

あれこれ考えていると、キリがありませんね。
 

この後、そんな展開があるのか、

ちょっぴり気になるところです。


あ、私はネットオークションで

そいういうメモリー媒体を購入したことは

ないので、とりあえず当事者となることはない

とは思いますおねがい

 

でも、その他に匿名で購入した商品が

そういう問題のある商品ではないことの保証は

ないと言えるのかもしれません。

 

いろいろ考えさせられる一件でした。

 

匿名での売買も一般化しており、

こういうことについても、

注意しようとして注意できる余地も

少ないのかもしれません。

 

それでもやっぱり、

できるだけ注意したいなと思います。

 

今年もあと少し。

お元気でお過ごしください☆