多摩川
台風の爪痕の残る河川敷を
一人
歩く
ふと目に飛び込んできたのは
川縁の枯れ木に引っかかった
アメリカ国旗模様の
ボロボロにひきさかれたパンティ
上流から流されてきたのだろう
俺は今まで
たくさんのパンティを見てきた
しかし
こんなに凄惨で
破滅的で
だからこそ
エロチックで
ロックンロールなパンティの姿を
初めて見た
いったい
どんなドラマを経て
このアメリカンパンティは
今
俺の前に現れたのだろうか
俺の右の手のひらに
握り締められているのだろうか
目をつぶり
想いを馳せる
黒地のレース部分に
涙が一滴
落ちた
いつか
映画を作ろうと思った
一枚のパンティが
大冒険の末に
運命の人に出会う
そんな素敵な
映画を
江口