気が付けば


涙が頬を伝っていた





信じていた



今年も

蝶のように可憐に舞い
唄う君に会えると





震える指先で涙を拭い

もう一度
テレビの画面に視線を向ける







『美川、紅白落選』


あってはならない現実が

そこにはあった



枕に顔をうずめ

必死で頭の中を整理する


ゆっくりと深呼吸をして
荒い呼吸を整える



身体の一部をもがれたような感覚


激しい鼓動に合わせて

心をつんざく痛みが襲う




誰か


誰か助けてください!



絶望に打ちひしがれた俺に

ある考えが浮かんだ


刹那

わずかな光が差した





大晦日
格闘技イベント
『dynamite』


メインの試合は

まだ決まっていないはずだ



俺の脳裏に

憲一姉さんが

マウントポジションでヒョードルにパウンドを打ちおろす絵が

鮮やかに浮かんだ




江口