家の近所に小さな喫茶店があります
焦茶色で統一された木製家具
オレンジ色に照らすゴージャスなシャンデリアたち
店内は綺麗に掃除がされていて
窓際には手入れの行き届いた観葉植物
マスターのきれい好きが伺える店
それが喫茶店「十字路」
この街でずっと変わらぬ
憩いの空間をお届けしてきたこの喫茶店にも
店を畳まなければならない危機があったらしい
それは、２年前の駅の拡張工事に伴い
店の前の十字路に車線をひとつ増やす計画が
マスターがずっと守り続けてきた喫茶店「十字路」
その店の前の十字路が拡張工事で五叉路にされてしまう事に反対すべく
工事が始まってから毎日
現場で働く作業員に
店のコーヒーを振る舞った
焼けるような暑い日も、鬱陶しいほどにどしゃ降りの雨の日も
そんな彼の行動に心打たれた作業員達は
土を掘る手を止め、ショベルカーの鍵を放り投げ
職場放棄をして計画中止を訴えた
拡張工事が始まってから半年後
駅の拡張工事に伴う喫茶「十字路」前の五叉路計画は、ついに中止になった
あれから２年
店の前の十字路は守られたが
駅の拡張工事で人の流れが変わってしまったおかげて
今では誰も気に止めない
地味な喫茶店として
ひっそりと店を続けています
ただ、
今でもマスターは
いつでもおいしいコーヒーを届けるべく
店のコーヒーカップを磨いています
今日はコーヒーでも飲むかな
どぶロック もり
マスターはずっと
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