明治座で上演中の劇団☆新感線44周年興行「いのうえ歌舞伎『バサラオ』」を観てきました。
明治座はGWに観に行った地球ゴージャス以来ですが、その時は2階右サイド席、そして今回は2階左サイド席・・・ここは席には恵まれていません。
でも、そもそも取りづらい新感線の公演に生田斗真さん、中村倫也さんを迎えた本作。
観られただけで幸運なのかもしれません。
まず、このチラシがカッコいい!
というか美しい!!
そして、毎回のことながら幕開けのテーマ曲が流れるとワクワクする!!!
ヒノモトの国を舞台に幕府と帝の対立を軸として進んでいくのですが、関わる人々にはそれぞれの思惑があり二転三転していきます。
誰が味方で誰が敵か、何が真実で何が虚実なのか?
物語にのめり込めばのめり込む程、作者の意図に翻弄される(あまり先読みできない)人なので、くっついたり離れたりする登場人物に「え~っ!」となりました。
劇団☆新感線の話には腹の探り合い、駆け引きとか裏切りみたいな要素は定番だと思うのですが、これまでこんなに二転三転する展開はあまり記憶にありません。
物語の始まりでは鎌倉に拠点をおく幕府が政権を握っていて、帝は隠岐の島に流刑されています。
幕府は執権・キタタカ(粟根まこと)が実権を握っており、流刑の帝・ゴノミカド(古田新太)は成すすべもない状況。
キタタカの密偵として働いていたカイリ(中村倫也)は偵察状況を報告に上がりますが、その場で「これを最後にしたい」と願い出たことで「帝側に寝返った」という疑いをかけられてしまいます。
何とか逃げ切ることに成功しますが、その途中でバサラの宴を催すヒュウガ(生田斗真)と再会。
ふたりは同じ村の出身で、「幼い頃にいじめられていたヒュウガに対して、カイリだけは手を出さなかった」という過去はあるものの、親友という関係性ではなさそうです。
そこにやってくる幕府の役人。
ヒュウガの美しさは多くの女たちを惹きつけ、彼女たちを連れ戻そうとする役人に対して斬りかかっていく。
カイリは彼女たちを守ろうとするが、自分のために死ぬことは幸せなことと考えるヒュウガはそれを見守るばかり・・・そして彼女たちは次々と命を落としていく。
物語の冒頭ですし当然の事なのですが、観終わるとこのシーンが全てのスタート。
ヒュウガの野望、彼に対するカイリの本心。
一方、幕府側ではキタタカに対してサキド(りょう)がヒュウガ成敗の名乗りを上げます。
しかし、彼女もまた彼の美しさに魅了されてしまいます。
その結果、ゴノミカドは京に戻り、幕府と帝、鎌倉と京都の対立構造が出来上がります。
しかし、倒幕の旗印となる帝もまたくせ者。
自分を担ぐヒュウガやサキドを「あの子たちはいらない」と殺害を命じ、反旗を翻した息子は容赦なく斬りつける。
それぞれの思惑が交差し、たどり着く結末は・・・。
歌やダンスシーンも盛り込まれる新感線らしい演出は単純に「観ていて楽しい」と思いますが、ゲスト陣も良かったです。
斗真さんを観たのは初めてかもしれないけれど、登場シーンから華やかで観客席から拍手が起こります。
歌やダンスが上手いのは当然として、殺陣のシーンのキレも見事です。
あの衣装でよくあんなにスムーズに動けるなと思いました。
2階席からでもその美しさはわかるし、男も魅了してしまう主人公にピッタリと嵌っていました。
もう一人の主役である倫也さんの出演舞台は何度か観ているので、演技の安定感は承知していましたが、歌も上手いし立ち回りも滑らかでした。
軍師、策士として物語を動かしていく重要な立ち位置ですが、ラストでは幕府と帝を倒してバサラの王となったヒュウガと対峙することになります。
非情なヒュウガとひとりの女性への想いを語るカイリの対比はもうひとつの物語の軸になっているかもしれないと思えるクライマックスです。
唯一ヒュウガに惑わされることがなく帝を護衛する女性アキノを演じていた西野七瀬さんも初めてかもしれません。
自分が殺害した男しか愛せない-というか頭蓋骨の形に執着している-少し猟奇的な役柄ですが、倫也さんとのコミカルなやり取りもあり、その切り替えも見事です。
劇団員では何をおいても古田さんであることは異論を挟む余地もありません。
それは開演からしばらく経って古田さんが登場した時に起きた拍手からもわかりますが、何かやってくれそうという期待感でもあります。
私が観に行った日には同じセリフを2度繰り返した後に「何で2度言ったんだ」と自己突っ込みしていましたが、周りが笑いを堪えているような仕草が見られたので、アドリブだった(あるいは本当に間違えた!?)のかもしれません。
帝という役柄からいつもような殺陣のシーンはないのかな?と思いましたが、自ら出陣する武闘派の帝で見せ場はありました。
客席通路を頻繁に役者(主役級の人たちも!)が行き来するので、1階席通路近くの人はうれしいと思います。
あと前方席の人は、ヒュウガのあの姿で見つめられたら虜になってしまうこと間違いなし!?
30分の休憩を挟んで4時間近い見応えのある作品ですが、その長さを感じませんでした。
面白かったぁ~。
色々と語りながらも、結局はそこに収束してしまうのです。