世田谷パブリックシアターで佐藤隆太さん主演の「GOODー善き人-」を観てきました。

佐藤さんも萩原さんも出演舞台を観に行くのは久しぶりなので、このチラシをもらった時に即決しました。

 

この作品は「イギリス演劇界を席捲した話題作!」とのことで、映画化もされているようです。

演出は長塚圭史さんで、長塚さんの演出作品も久しぶりのような気がします。

 

 

幕が上がると佐藤さんの語りかけで物語は始まります。

上手にはバンドが控えており、主人公であるジョン・ハルダー(佐藤隆太)の頭の中に鳴り響く音楽を生演奏するのですが、場面によっては楽器後ろの壁から出入りして演技にも参加します。

生演奏が入ると当然チケット代も高くなるけれど(!?)、やはり臨場感は高まります。

 

内容も確認せずに、出演者だけでチケットを取ってしまったので知らなかったのですが、物語の舞台はヒトラーが台頭し始めた1930年代のドイツ(また、ナチスなのか・・・と思いましたが・・・)。

大学教授のジョンは、妻(野波麻帆)と子供、そして認知症の母親(那須佐代子)の面倒をみながら暮らす良き家庭人。

しかし、施設に入っている母親は家に帰りたいと訴えかけ、家に戻ると自分のことが出来ずに苛立ち、施設に戻ると言い出します。

そして妻は家庭のことを上手くこなせずパニックになり、彼にかかる負担はとても大きいのです。

 

そんな状況の中、彼は親友のユダヤ人精神科医・モーリス(萩原聖人)にだけは自身の悩みを素直に話すことができます。

そして、モーリスはナチスの反ユダヤ主義によって生まれ育ったドイツを追われるのではないかという不安を語ります。

ナチスの勢力を深刻に考えていないジョンはモーリスの話を軽く受け取っており、党員になることを責められても、その態度は相変わらずです。

 

さらにナチスの勢いが増す中、出国するためのチケットをお願いするモーリスに対して、目の前の食事の方が問題だと答えるジョン。

しかし、自分の意志に反して党員として評価されることになり、その大きな力(流れ)に逆らうことが出来ずに親友を裏切ることになります。

 

それは自分が生き残るためには仕方がない選択なのか?

そして、私たちは彼と同じ立場に立たされた時にどのような選択をするのか(すべきなのか)?

 

正義とは何か、揺らぐことのない絶対的な正義というのは存在するのか?

 

世界に目を向ければ今も争いごとは絶えないし、身近なところではハラスメントやいじめの問題に関しても同様。

「善き人」であり続けることは難しく、考えることを放棄して流されることは容易い。

実力派が揃っており重いテーマを持つ作品で、考えさせられることが多い3時間でした。