東京マハロ リバイバル公演「明日、泣けない女。昨日、甘えた男」を観てきました。
東京マハロは「たぶん世界は8年目」を観たのが初めてで、付かず離れずといった感じでしたが、コロナ明けの観劇再開後は年1回くらいは観に行っています。
今回は予定が直前まで決まらず、残っていた当日引換券で観に行ったので夜公演。
劇場は新宿シアターサンモール。
最寄り駅は新宿御苑前駅なのですが、新宿の華やかさはなく暗いです(余談です)。
昆布漁が主産業である襟裳町を舞台に女性の性依存症(セックス依存症)をテーマにした物語です。
主人公の鈴子(増田有華)は早くに母を亡くし、父親・鉄男(朝倉伸二)、義母・茉莉花(岡元あつこ)と暮らしているのですが、義母との関係は良好ではありません。
鈴子は町の男たちに体を売ることを仕事としていますが、閉鎖的なコミュニティの中で、それは公然のこととなっており、茉莉花はそれが気に入りません。
しかしそれは、鈴子のことを思って言っているわけではなく、世間体を気にしているだけ。
一方で鈴子は、自分の母親はひとりだけだと彼女を受け入れようとはしません。
そんな町に、ある日東京からふたりの女性がやってきます。
彼女たちもまた性依存症の悩みを抱えています。
鈴子の知り合いの桃子(伊集院あさひ)はDVが原因で、もうひとりの女性・えみる(イトウハルヒ)は幼い頃に親の愛情を受けていないことが原因のようです。
事情を知った男たちは、「昆布漁で成り立っている町におかしな噂が立つと産業に影響が出る」と彼女たちを追い出そうとし、「アルコールや薬物の依存と違い、本人の意思の問題だ」と言い放つのですが、彼女たちと関係を持つと態度を一変させます。
鈴子は本当の原因を知りたい、依存症から抜け出したいと考えて治療施設に入ることを決断しますが、そのことが知れ渡ることを気にする両親に反対されてしまいます。
唯一、彼女たちに寄り添う女性がスナックのママ(小川菜摘)ですが、彼女もまた自分の息子(関優樹)が桃子と関係を持ったことを知ると拒絶反応を示します。
結局は彼女も他人事として接していたのではないでしょうか。
舞台は回転式になっており、昆布小屋(?)とスナックのセット(時折、鈴子の家やホテル?のセットもあります)を中心に物語は進んでいきます。
携帯電話には毎日のようにミサイル発射のアラートが鳴り響きますが、漁師たちにとっては天候(風)によって漁に出られるかどうかの方が気になる。
そんな町の人々と、それぞれ原因は異なりますが心の空白を抱えた女性たち。
依存症から抜け出したけれど、その結果まわりの人たちが自分から離れて行ってしまうのではないかという不安を抱いてしまう鈴子ですが、茉莉花が妊娠したことを知った鉄男には、産まれてくる子供のため町を離れるように伝えられます。
彼女はそれを受け入れますが、誰もが自分の事しか頭にないように思われて悲しくなります。
ただ、自分をその立場に置き換えて見ると、やはり距離を置いてしまうのではないかとも思います。
鈴子が町を出て行くところで物語は終わり何も解決しませんが、彼女を藤原(水野勝)が見送りに来て、それまでに出会った女性の中で一番だと語るラストシーンには少し救われました。
性依存症がテーマになっていますが、そこにスポットをあてただけものではなく、悩みや心の空白を抱える人たちへのメッセージのように感じました。
