今回は、サービス残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。
ウ 原告の職務手当は,副店長に就任した後に支給されるようになったものであることからすると,その実質は副店長の地位に応じた役職手当であるといえるけれども,その金額は月額2万円であり,他のアシスタントリーダーの職務手当に比して多額であるとはいえない。
また,原告の家族手当は,Bと比較するときは,原告に扶養する子がいるという理由で支給されたものであると認められ,副店長としての処遇とはいえない。
また,原告が顧客から受領する早出代については,被告から受領するものではなく,これを被告による副店長としての処遇とみることはできない。
そうすると,原告は,被告から副店長としての役職手当の実質を有する職務手当(月額2万円)の支給を受けていたけれども,それをもって格別の金銭的処遇を受けていたということはできない。
エ 原告は,「美容室バズ」の営業時間と予約の最終受付時間によらず,顧客の予約をふまえ,出退勤の時刻を調整していたとはいえるが,出社時にはタイムカードに刻印をしたり,遅刻罰金制度の対象となっていたことからすると,顧客の予約がないからといって所定の出勤時刻に遅れて出勤してもよいというわけではなかったものと認めるのが相当であるし,それに基づいて店のパソコン上で勤怠実績一覧表(〈証拠略〉)を作成していること,被告代表者はタイムカードの刻印をしていなかったことからすると,被告による出退勤管理を受けており,被告が原告の就労時間を把握することが困難であるのということはできない。
オ してみると,原告は,自らの業務内容について,その内容及び時間を決定する上で裁量があり,副店長兼トップスタイリストとして,被告代表者,店長に継ぐ地位にあり,店舗経営(サロンワーク)に関しては,被告代表者ともに中心的な役割を担っていたといえるけれども,被告の経営,人事,労務管理等へ関与は限定的であり,格別の金銭的処遇を受けていたわけでもなく,自らの労働時間についても被告による出退勤管理を受けていたものであるから,労働条件の決定その他労務管理について経営者である被告と一体的立場にあるとまでいうことはできない。
したがって,原告は,労働基準法41条2号にいう「管理監督者」ではないというのが相当である。
(2)争点(2)について
被告は,基本給と歩合給という賃金体系が美容師業界において一般的に使用されているものであって,美容師の労務の特殊性から導かれる必要的かつ合理的な賃金算定方法であって,原告もこの賃金体系とその意義を十分に理解した上で労務を提供していたのであるから,原被告間では,被告が原告に対して支払った給与のほかに時間外手当(残業代)が支給されないことについて合意が成立していた(ので時間外手当(残業代)の支給義務はない)旨主張する。
しかしながら,基本給と歩合給という賃金体系が美容師業界において一般的に使用されているとしても,歩合給の賃金体系をとって,それに同意していることをもって労働基準法37条の時間外手当(残業代)の支払を免れることができるものではない(労働基準法37条1項,4項,労働基準法施行規則19条1項6号は,歩合給であっても時間外手当(残業代)の支払があることを予定している。)。そして,被告が原告に対して支給した歩合給(ないし職務手当)について,そのなかに時間外手当(残業代)が含まれているとか,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外手当(残業代)に当たる部分とを判別することができるといったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,仮に被告主張の合意が成立していたとしても,労働基準法13条により無効であるから,被告の前記主張は失当というほかない。
(3)争点(3)について
前記のとおり,原告はスタイリストとして自分の裁量で顧客に対するサービスの内容及び時間を決定できたのであるし,証拠(〈証拠略〉,原告,被告代表者)によれば,基本給と歩合給という賃金体系が美容師業界において一般的に使用されているものであって,原告も被告を退職した後に勤めている美容室では完全歩合制が採用されていることも認められる。
そうすると,被告が,歩合給の賃金体系が美容師の労務の特殊性から導かれる必要的かつ合理的な賃金算定方法であるという認識のもと,被告が時間外手当(残業代)を支給しなかった態様が悪質であるとまではいえず,付加金という制裁を課すことが相当でない事情があると認められる。
したがって,被告に対し,労働基準法114条に基づく付加金の支払を命ずることはしない。
3 以上の次第であり,原告の本訴請求は,労働基準法37条に基づく時間外手当(残業代)278万4705円及びこれに対する平成18年12月30日から支払済みまで賃金の支払の確保に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余の部分については理由がないから棄却することとする。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉、オフィスや店舗の敷金返還請求(原状回復義務)や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
ウ 原告の職務手当は,副店長に就任した後に支給されるようになったものであることからすると,その実質は副店長の地位に応じた役職手当であるといえるけれども,その金額は月額2万円であり,他のアシスタントリーダーの職務手当に比して多額であるとはいえない。
また,原告の家族手当は,Bと比較するときは,原告に扶養する子がいるという理由で支給されたものであると認められ,副店長としての処遇とはいえない。
また,原告が顧客から受領する早出代については,被告から受領するものではなく,これを被告による副店長としての処遇とみることはできない。
そうすると,原告は,被告から副店長としての役職手当の実質を有する職務手当(月額2万円)の支給を受けていたけれども,それをもって格別の金銭的処遇を受けていたということはできない。
エ 原告は,「美容室バズ」の営業時間と予約の最終受付時間によらず,顧客の予約をふまえ,出退勤の時刻を調整していたとはいえるが,出社時にはタイムカードに刻印をしたり,遅刻罰金制度の対象となっていたことからすると,顧客の予約がないからといって所定の出勤時刻に遅れて出勤してもよいというわけではなかったものと認めるのが相当であるし,それに基づいて店のパソコン上で勤怠実績一覧表(〈証拠略〉)を作成していること,被告代表者はタイムカードの刻印をしていなかったことからすると,被告による出退勤管理を受けており,被告が原告の就労時間を把握することが困難であるのということはできない。
オ してみると,原告は,自らの業務内容について,その内容及び時間を決定する上で裁量があり,副店長兼トップスタイリストとして,被告代表者,店長に継ぐ地位にあり,店舗経営(サロンワーク)に関しては,被告代表者ともに中心的な役割を担っていたといえるけれども,被告の経営,人事,労務管理等へ関与は限定的であり,格別の金銭的処遇を受けていたわけでもなく,自らの労働時間についても被告による出退勤管理を受けていたものであるから,労働条件の決定その他労務管理について経営者である被告と一体的立場にあるとまでいうことはできない。
したがって,原告は,労働基準法41条2号にいう「管理監督者」ではないというのが相当である。
(2)争点(2)について
被告は,基本給と歩合給という賃金体系が美容師業界において一般的に使用されているものであって,美容師の労務の特殊性から導かれる必要的かつ合理的な賃金算定方法であって,原告もこの賃金体系とその意義を十分に理解した上で労務を提供していたのであるから,原被告間では,被告が原告に対して支払った給与のほかに時間外手当(残業代)が支給されないことについて合意が成立していた(ので時間外手当(残業代)の支給義務はない)旨主張する。
しかしながら,基本給と歩合給という賃金体系が美容師業界において一般的に使用されているとしても,歩合給の賃金体系をとって,それに同意していることをもって労働基準法37条の時間外手当(残業代)の支払を免れることができるものではない(労働基準法37条1項,4項,労働基準法施行規則19条1項6号は,歩合給であっても時間外手当(残業代)の支払があることを予定している。)。そして,被告が原告に対して支給した歩合給(ないし職務手当)について,そのなかに時間外手当(残業代)が含まれているとか,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外手当(残業代)に当たる部分とを判別することができるといったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,仮に被告主張の合意が成立していたとしても,労働基準法13条により無効であるから,被告の前記主張は失当というほかない。
(3)争点(3)について
前記のとおり,原告はスタイリストとして自分の裁量で顧客に対するサービスの内容及び時間を決定できたのであるし,証拠(〈証拠略〉,原告,被告代表者)によれば,基本給と歩合給という賃金体系が美容師業界において一般的に使用されているものであって,原告も被告を退職した後に勤めている美容室では完全歩合制が採用されていることも認められる。
そうすると,被告が,歩合給の賃金体系が美容師の労務の特殊性から導かれる必要的かつ合理的な賃金算定方法であるという認識のもと,被告が時間外手当(残業代)を支給しなかった態様が悪質であるとまではいえず,付加金という制裁を課すことが相当でない事情があると認められる。
したがって,被告に対し,労働基準法114条に基づく付加金の支払を命ずることはしない。
3 以上の次第であり,原告の本訴請求は,労働基準法37条に基づく時間外手当(残業代)278万4705円及びこれに対する平成18年12月30日から支払済みまで賃金の支払の確保に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余の部分については理由がないから棄却することとする。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉、オフィスや店舗の敷金返還請求(原状回復義務)や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。