ナンティン | -Yellow Olla Plan- 北川昇吾

ナンティン

 オレの家(借家)の庭には南天の木が生えている。

 毎年この時期になると、実が赤くなってくる。
 
 そんなことを道端で思い出した。

 なんで赤くなるんだろう?

 やっぱり誰かの眼を惹くようにだろう。
  
 実際オレも、こうして思い出してしまったし。

 そして、南天の実は鳥の大好物らしい。

 どうりで、これからの時期トリ野郎の声が聞こえるわけだ。
 
 冬の朝の音だよ。うん。

 それと南天の実は南天のど飴があるぐらい、乾燥させて飲むとのどにいいらしい。

 それと、南天は「災い転じて福を招く」の難転からきているそうで、縁起がよいらしい。

 それとその昔、武士の出陣に臨んで、南天の一枝を鎧の内に挿し武運長久を祈ったらしい。

 あと、雪だるまの目とかに丁度いい。

 なんかオリーブの木とはかけ離れた、というか正反対の様な南天の木には、日本を感じる。

 寒空の下、刀の訓練に励む武士の姿、その傍らに南天の木。

 木枯らし吹くなか、商売道具を背負い、長い帰路につく商人が家族を想う時、傍らに南天の木。

 南天、南天、ああ南天。

 実が成らないうちには、いっそ切り落とそうかと思った南天。

 その侘しさはどこからくるのか。

 トリ野郎は一心に実の熟すのを待っている。