計算が達者で知恵も他人以上、人に重宝がられるが貧しい人とはいるものだ。これは字が上手くなると今度は知恵が邪魔になって家業が上手く行かない人がいる。この一文不通[1]の人は、余計な事をせず家業に集中しているので金を貯めていく。

 

百姓は星が出てきてから家に帰るくらい勤めれば、財産もよくなるのは間違いない。その通り勤めなければ、読み書きと智恵と邪魔になって、本来重要な家業に疎くなる。町人で金を稼いで財産を増やす人は、風流を好み、書を読み、書を書く人はいない。

 

農家では農業を勤めるのが業であり、町人や職人が金を稼ぐのが業であるから、読み書きが疎くても恥にはならない。

 


[1] 一つの文字も読み書きができないこと

 

いわゆる器用貧乏っていう奴で、何でもできる人って本文で書いてあるようにちょろちょろと細かい仕事を受けて、何にも残らない人って結構います。今の日本の人事制度もそういうアホなところがあって、仕事を集中させずに多能工と称して複数の業務をやらせて、人事異動を繰り返してその人の本当の良さを生かしきれずに中途半端にして潰しているところってあるように思えます。

 

本当にアホだと思いますよ、定期人事異動というのは。

 

この当時の書というのは揮毫を頼まれたり、一種の芸術家みたいな感じの扱いだったようです。今も田舎の古書店(古本屋ではなく)に行くと、地元の書家と称する人の作品が出ていたりします。今で言ったら、オタクの絵師みたいな感じですかね。

 

こういうのはプロとして生活するなら、徹底してやればいいのであって、中途半端が一番いけません。やるなら退路を断って徹底的にやりましょう。