ここに一つ話がある。浪華に川島屋何某という町人がいる。若いとき妻を迎えた。その付き添いの下女にしずというのがいた。一人男の子を生んで病死してしまった。この子は幼い頃からしずに母親のように懐いていたので、妾として後妻を迎えなかった。そこから年が過ぎて天満の下原というところに隠居部屋を作り、家名と商売を子供に譲り、妾を連れて隠居した。二人とも剃髪して、しずは貞旭と改め、後生を祈った。

 

今の主はとにかく我がままで、茶に狂い金を遣いまくり、散財しまくった。貞旭は

 

「今の旦那様は金遣いが荒く、今後の財産管理が心配です。価値がありそうなものはこちらで使うと言って別にしておいた方がいいようです。」

 

というと

 

「それももっともだ」

 

と同意し、別に分けるようにした。これもあまり度々やるので家の人も不審に思うようになった。貞旭が言う事が伝わると、当主夫婦は勿論、家で働く人は皆それに従わなくなった。貞旭がたまに本家に行くと、「欲ボケ坊主」と呼ばれるようになった。

 

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これは今だと一番やったらダメな案件ですね。所有権が移ったら、極端な話店を増やそうが潰そうが、商売替えでも新しい主人の一存でやっていいんですよ。それが所有権です。共同所有でない限り絶対口出ししたらダメです。

 

先祖伝来のとか先代の苦労を無駄にするのか!という気持ちは分からんでもないですが、それを言うならまだ自分が経営していなさい。今の時代、代表権がない会長とか顧問とかいう意味不明なのがまだ残っていますが、おそらくこういう心理なんでしょうね。やめるならきれいさっぱり潔く引退してもらいたいものです。

 

そもそも引き継がせる段階で、こいつはどういう金の遣い方をするか分かっているはずです。後からダメとかはあり得ません。同居の家族ではないので、もし今やったら窃盗になりますよ。