こういうのは太平の世とは今のことを言うのか。自分たちは大黒殿は昔から今と変わらず、屋根の棟上げをするのは驕りだと片庇[1]にされて、とにかく上を意味ないようにして大きくなるくくり頭巾[2]をつけられて、おごらないように用心に自分の頭には打ち出の小槌を放さず、捨てるようなものであっても捨てずに袋に入れて、いつでも半纏に股引姿。稼ぐに貧乏は追い付かないとのお世話。いつでも二俵の米を踏んで、俵の口を開けたのを見たことはない。これは金銀米穀を蓄えなさいという教えで、内典[3]の中をのぞくと金銀を持つことの話は出てこない。仏を信じ、神を敬い、黄金珠玉はただこの世の財宝である。栄華栄耀は更に仏道の助けのお陰ではない。官位寵職は現世の名聞であって、こんなのを見てこの世の福や金を願うものではない。仏果[4]は菩提心[5]を起こし、不浄な心を捨てて清静道[6]に入れとという教えである。驕りを慎んで家を作るには昔から決まりがあって、武家には瓦屋根と白壁が許されて、町人や百姓は国の領主の御用達は、上から預かったものであるから、瓦葺が許される。ところが愚か者は遠慮知らずだ。

 


[1] 一方にだけ傾斜するように構築した屋根。さしかけの屋根。

[2] 頭の形に合わせて丸く作り、へりをしぼった頭巾。大黒頭巾。

[3] 仏教の典籍

[4] 仏道修行の結果として得られる、成仏 (じょうぶつ) という結果。

[5] さとりを求める心。

[6] 無欲な状態

 

くくり頭巾。

 

今は逆にかやぶき屋根と木製の壁の家は、火災の危険があるので作れなくなりました。今だと金がないのにタワマンの上層階に住もうって話ですかね。

 

バブル期だとブランド品を買いまくるようなものですか。そういう人もいないと経済は回らないもんです。