人はそれぞれの職業について、その職業にあまり詳しくないのは国賊である。下の罪をよく改めて、そこそこ回る世の中もあるが、上の罪を改めないのは武将の誤る所である。多くの人の中から善人を取り上げるか否かが境である。これをしないのは天下が安定しているとは言えない。

 

柳原忠光の息子である。町と号した。正二位大納言であった。母は吉備宜成国の娘で応永十二年[1]二月に亡くなった。

 


[1] 西暦1405年

 

亡くなったのは原文では二月となっていますが、他の資料では12月となっていたので、たぶん転記ミスで本当は12月でしょう。

 

リーダーとしての資質の話ですね。自分の家のことを知らない、ましてや職業についてちゃんと答えられないというのは、本人だけの問題ではありません。そこに金を払って仕事を依頼している人にとっても、とんでもない迷惑です。

 

以前、裁判の傍聴に行ったときに裁判官の言っていることを理解できず、アホなことを言い続けて叱られていた弁護士を見たことがありますが、ああいうのは依頼人にとってもとんでもない迷惑な話です。

 

組織で、仕事をしているならば上にいる人の最も重要な仕事は、部下を引き上げる事なんですよね。優秀と言ってもここでは単に仕事ができるという意味ではなく、善人であるかどうかが問題になります。