さて、日向を半切り四つ切にして、桂枝[1]という薬は、傷や寒い時期に流行る病気を治し、また五霊脂[2]という薬は疱瘡を軽くする特効薬である。この薬を粉にして煎じても、朝汲んだ水で飲めば、呪いでてき面に効果があるので、一般に知られていると書いて、町の門または番屋、浜の納屋、人が立ち寄る全ての壁に貼らせておいた。大坂は勿論京都まで貼った。物見高い大坂の気風であるから、この書いたものに集まり、「さて、時疫と疱瘡の良く効く薬だが、人のためを思う人が貼っておいたのだろう。」と噂した。家に帰ってからは知った顔をして、桂枝と五霊脂は時疫と疱瘡の良く効く薬だと話をすると、隣の傷寒病の患者が飲んでみたいと買いにやったが、向かいに住む幼い子供に勧めて飲ませ、治るかどうか関係なく移り気な世界である。さらりと熱が下がって傷寒病が治ったといい、疱瘡患者に飲ませたら軽くなったなどなど。一人嘘を言えば、千人が本当のことを伝え、新しいことを知ったと言いふらす者が多いので、それならと薬種を買いに走る人が非常に多くなった。町の薬屋で売り切れになると値上がりして、よく効く薬があるものだと、登り船の乗合話までに出る状態、京都に廻って買うように流行らせて、値段が上がるように仕掛けた商売の工夫で、思うように高い利益を取って売払うのは自分一人だけである。買いつけられて預かった問屋も後になって理解したが、みすみす利益を取られ、商売が上手いと評判が回るほど吹き付ける金儲け、宿這入[3]りして五六年の勘定が二百貫目の財産、欲には限りがないもので、自分には見えないものである。徐々に気が高ぶって金儲けはし易いもの、貧乏になるのは阿呆だと仲間を馬鹿にした。

 


[1] トンキンニッケイ(カシア)などの幼若枝または樹皮を乾燥させ、健胃・解熱・鎮痛・去痰(きょたん)薬などに用いる。

[2] ムササビの糞。

[3] 別家して店を構える事。

 

今やったら薬事法違反と不当表示で営業停止どころか、刑務所行になります。

それはそれとして、マーケティングは必要です。マーケティングは単なる宣伝ではありません。在庫管理も含めたうえでの流通と販売を管理する事です。ここで成功したようです。

しかし、金を持つとやらかすのは他人を馬鹿にすること。これはやってはいけません。部下が真似をするようになります。そうすると、下の人間がお客さんに対しても横柄な態度をとるようになります。一度そういう雰囲気ができると、もう戻すのは不可能と言ってもいい状態になります。

ある会社ですが、親がバブル期に8億円の借金、売上3億の会社ですから、債務超過です。これを3年で立て直した人がいました。

ところが、それを鼻にかけて商工会議所でも部下の前でもお構いなしにやったものですから、一斉に部下が止めてしまい、商工会議所でも総スカンを食い再び赤字に転落というのが身近にいました。