計更子には二人の息子がいる。すでに成長したので自分で稼いで生活する方法を教えようとして、千貫銭を与えて言った。

 

「兄は山を買って漆の木を多く植えて育てなさい。三年後には必ず数石の漆が採れて、これから長い間生活の種になるだろう。弟は一段の田地を買い、そこを深く掘って池にして、鯉や鮒を養殖しなさい。三年後にはそれが成長するにしたがって、稚魚が育ち徐々に増えていく。ときどき網を入れて魚を獲り市で売って生業としなさい。」

 

兄弟は父の命じた通りにして、三年後には大きな利益を得て金持ちになった。ある人が計更子に質問した。

 

「兄弟に生業を教えるのに注意しなければならないのは、何でしょうか。」

 

計更子は答えた。

 

「だいたい、人には好きな物と嫌いなものがあるのです。どんなことであっても、その人の嫌いな事を無理強いしたら、その事は上手く行かないだけではなく、却って害になります。また、その人が好きな事をさせれば、他人が強制するまでもなく自分が好きな道には怠慢にならず、遂にその事を成就するものです。兄は幼いころから山が好きで木で遊び、弟は水が好きで魚で遊ぶのを見ていたので彼らが好きなのが分かりました。こうして兄は山を買って漆を植えさせ、弟には池を作らせて魚を利用することを教えました。もし、兄に魚の利を教え弟に漆を教えたら、好きでもないものを教えるだけでなく、いずれ利益は出ず損は免れないでしょう。丸い者が好きな人には丸いところを与えて、角張ったものが好きな人には角張ったところに導く。人を理解して、それぞれの役に使う道でしょう。」

 

多く部下を抱える人は、特にこの点に注意すべきだ。人の上司になる人はこの点を理解しなさい。

 

花国通宝の栄華は、期待しなくてもやってくる。

人を遣うときの鉄則ですね。NHKでしたっけ。社長が変装して現場に行き、実習生と称して現場の仕事をする番組がありました。

 

社長は全体の管理者であるにもかかわらず、現場で何をやっているのかをよく理解していないし、いくら教えられてもなかなかできないのが放映されていました。

 

まあそんなもんです。新入社員のときに実習でやって、何となく分かるような気がしたぐらいで次の実習に移ります。全く知らないよりはマシの状態で特定の部署に配属されます。

 

意外なところに配属され、私はこれを勉強してこれがやりたいからこの会社に入ったのに!と思うかもしれません。

 

自分がやりたいから、好きだからと言ってその能力があるとは限りません。やっているうちに好きになることもありますし、また逆もあります。

 

私の知っている人で、弁護士になりたくて4年浪人して資格を取り10年営業しましたが、思っていたのとあまりにも違い過ぎて研究職、しかも法律系じゃない分野に行った人がいます。優しすぎたのでしょうね。

 

ともあれ向き不向きがあるので、上司は注意してやらなければなりません。