数万両の金を持つ家の男の兄弟がいた。その父は山を買って兄弟に与えた。

 

「お前たちはこの山を使って金持ちになったら、私に見せなさい。」

 

といった。兄弟はその命令を受けて金持ちになる計画を立てた。弟は一朝で金持ちになり、兄は貧乏になった。父は兄弟を呼んでその理由を尋ねた。弟は、

 

「私はその山を貰ったら、数百人の人夫でその山の木をことごとく薪にして切り出して売払いました。早速多くの利益を得ました。」

と言った。兄は、

 

「私は弟がやったこととは全く違います。私は山の木を一本も切りませんでした。切ったのは大木にならない木を切って、松・杉・柏の類は数十年の間に大木となって棟梁になりそうな木は切らず、その間年数を待って大きく利益を得ようと思うので、今の時点で利益にするために小さな事は気にしませんでした。」

 

と言うと、父は感心していった。

 

「兄弟でも注意する点は大きく違いがある。弟は今利益を出しているが、将来は貧しくなるだろう。兄は今貧しくても後で利益を得るだろう。その理由は日をもって計れば、薪にして売るときの利益はすぐに手に入るが、年を経て考えてみれば大木となるのを待って棟梁となる材料といて売れば、薪の数百倍の利益となる。弟は薪にして切り尽くして大木となるべき材木を選ばなければ、山の木々を切り荒して、後での生産を失うので、後で貧しくなることを知っていた。兄はよく大木を愛し、用い方をよく知っており、目の前の小さな利益を捨てて、後で大きな利益を得る計画なので、今は大したことがなくても後で大金を得ると分かる。」

 

と言った。実際その言葉通りになった。

 

人は生産を計画するとき、ここに注意しなければならない。一銭は大したものではないと思ってはならない。一銭を稼ぐことを理解していれば、百銭につながる。百銭の勢いをもって、百貫に、そして千貫になる。一銭を稼ぐ方法は他にない。驕りをやめて倹約を守ることの二つしかない。俗には、一銭も小利の端くれという言葉を粗末にしてはならない。金が金を産むということを修行しなさい。

 

これ以外に瑞慶通宝が他にあるだろうか。

 

 

これは上場企業が苦しむところです。20年ほど前までは年に1回の決算で、1回の配当で済んだものが、今は四半期ごとの決算で配当も4回も求められそうな勢いです。こうなると3か月ごとにそれなりの利益を出さなければならず、どうしようもなくなります。

 

会社の経営なんていうのは、最低でも5年10年で見なければいけません。よくある安っぽいビジネス書では、「気軽に稼ぐ・・・」「簡単に年収・・・」など等ありますが、これもまた短期で利益を出さなければならない方便とでもいいましょうか、あんな言葉に踊らされてはいけません。

 

結局最近では、短期的利益を求められる株主の要求を嫌って、アメリカの電気自動車のメーカーが非上場化するかしないかでもめてますし、日本でも大手ファミリーレストランが一時期非上場化しました。

 

上場したところでいい事ばかりではないのです。

 

ところで、教育でもそうです。開発途上国ではその辺りがダメです。優秀なのは留学しても、そのまま短期的利益を求めて母国には帰らず、そのまま自分の稼ぎのために働いてしまいます。どれだけODAやら投資やらしても、その辺りの感覚が変わらない限り、国はよくならないでしょう。

 

最近の日本の教育は費用対効果を狙い、縮小傾向にあります。教育効果が出るのは20年先ということを考えると、財政再建の一環とかなんとかで切り詰めるのは将来の国力に大きな影響が出ますよ。