久しぶりの更新です!
先に言っておきますが、DDT(プロレス技)はもちろん安全には配慮に配慮を重ねて行っています(笑)。でも、教科書通りのリハビリをしても子どもは身体の使い方を覚えてくれません。
1. 「できない理由」のすれ違い
下肢不全麻痺を持つある子が、学校体育の課題を持ってやってきました。
テーマは「縄跳び」。そこには親子で異なる「犯人探し」がありました。
本人の訴え:「短下肢装具(SLB)が重いから、ジャンプもできないし走れない」
お母さんの訴え:「身体の使い方に問題があるから、うまく回せていないのでは……?」
本人は、自分の足を支える装具を「自分を縛る重り」だと思い込み、お母さんはそれを「身体機能の限界」だと捉えていました。
2. 縄跳びを置いて、「走り」から紐解く
あえて縄跳びを一旦横に置きました。お母さんの悩み(回し方)と本人の悩み(重さ)が混ざると、問題の本質が見えなくなるからです。
まずは「速く走るための要素」を整理します。
「パワーはある?」「足は速く回る?」
本人は自信満々に答えます。「キックは強い!足はめっちゃ動く!」
では、「体のバランス」はどうだろう?
実際に裸足で走ってみると、体が前のめりになりすぎて足が追いつかず、途中で足が絡まり転倒してしまいました。
私:「今、どうして転んだの?」
本人:「足が体についていかなかった!」
私:「じゃあ、バランスはどうやって取ろうか?」
本人:「わからない!」
そこで伝えたのは「頭のバランス」の大切さ。
試行錯誤の中で、本人が生み出した合言葉は「ぼくはサイ!!」でした。
これが面白くて、「よし、サイになった君を私がコントロール(調教)してやろう。君は頭がどこにあるかだけを考えて!」と、ここからはリハビリの「真面目さ」なんて窓から投げ捨てた時間です。
猛突進してくる「サイ」な彼を、私が安全にDDT(プロレス技)で迎撃したり、なぎ倒したり。
ほかの人が見れば怒られそうな光景ですが、本人は大爆笑。遊びの中で「あ、前のめりになりすぎるとやられる!」「頭の位置をこうすれば転ばない!」という感覚を、理屈ではなく身体で掴んでいきました。
3. 「重り」が「武器」に変わった瞬間
感覚を掴んだところで、本人が嫌っていた装具を履いてもらいます。
そして走ってもらった。
すると、結果は一目瞭然。
足元が安定したことでストロークが伸び、裸足よりも明らかに速いスピードで駆け抜けました。
私:「装具があるのとないの、どっちが速い?」
本人:「……装具あっても、速い!!」
本人の中で、装具は「重り」ではなくなりました。
4. 無自覚な「知識の呪縛」を剥がす
さあ、いよいよ縄跳びです。装具への苦手意識が消えた今、次なる課題は「回し方」。
ここで、本人が無意識に自分を縛っていた正体が見えてきました。
本人は肘を脇腹にギチギチに押し付け、必死に腕を固めて回していたのです。
本人はこれが問題だとは一言も言いません。おそらく学校で「脇を締めて」と教わった知識を、あまりに忠実に、過剰に守り続けていたのでしょう。
私:「その、肘を押し付けてるの、いらなくない? なくても回せるよ」
本人:(半信半疑でやってみて)「……ほんまや!」
正しいはずの知識が、皮肉にも本人の自由を奪っていた。
「型」を捨ててリラックスした瞬間、縄はスムーズに回り、ジャンプと見事に噛み合いました。回しながら跳ぶことで、ジャンプもより高く、スムーズに。
5. 結び:丁寧に、一枚ずつ剥がしていく
お母さんが心配していた「機能の限界」でもなく、本人が嫌っていた「装具の重さ」でもない。
本当の犯人は、「良かれと思って身につけた、ガチガチの知識」や「思い込み」でした。
重い装具は、走りを助けるギアになる。
正しい教えも、時に動きを止めるブレーキになる。
一つひとつ丁寧に、本人と一緒に「思い込みの皮」を剥いていく。
最後には、本来のポテンシャルがぴょんと顔を出します。
「これ、持ち帰って練習してみて!」
そう伝えた時の本人の顔は、最初に来た時よりもずっと晴れやかでした。
yeah!!