理学療法士として脳性麻痺の子どもたちと向き合う中で、大切にしていることがあります。
それは、筋力や関節の動きだけを見るのではなく
その子が「自分自身をどう使っているか」に注目することです。
先日、学校の発表会を控えた一人の生徒とのセッションで、非常に興味深い「身体と心のリンク」を経験しました。
1. 逃げ場のない「みんなの中心」でのパニック
彼は、クラスメイトに囲まれた円の真ん中で発表することに、猛烈な恐怖を感じていました。「サングラスをかけたい」「声を潰してしまいたい」……。次々と飛び出す「悪あがき」は、彼がどれほど「視線」という刺激に対して、反応してしまっているかの現れでした。
2. 刺激に対する「反応」を観察する
「緊張したら話せなくなる」と言う彼と一緒に、何が起きているのかを丁寧に紐解いていきました。
そこで分かったのは、彼が恐れているのはクラスメイトそのものではなく、過去に経験した「好奇の目(トラウマ)」という脳内にある幻想だったのです。
実際にその「視線」を再現してみると、彼の身体には即座に「不適切な反応」が現れました。
首を固め、頭を後ろに引き込み、脊椎を押し下げる(縮こまる)
その結果、座位のバランスが崩れ、呼吸が浅くなる
喉や舌の自由が奪われ、言葉が詰まる
まさに、「視線」という刺激に対して、全自動で「身体を固める」というスイッチが入ってしまう状態でした。
3. 「やり方」を変えるのではなく「在り方」を整える
ここで私がした提案は、「目線は気にしないで」とか「背筋を伸ばして」といった、表面的なコントロールの指示ではありません。
「私の目を見て。でも、何かをしようとしなくていい。ただ、私の身体の状態(目を見開いている、前のめりになっている等)を、ありのままに観察してみて?」
これは、自分を縛り付けていた「幻想の視線」から解き放たれ、今この瞬間の事実に意識を向けるための提案でした。
4. 視点が変われば、プライマリー・コントロールが蘇る
彼が「見られる側(被害者)」から「観察する側(主体)」へと意識をシフトさせた瞬間、劇的な変化が起きました。
「好奇の目で見られている」という思い込みによる過剰な反応が止まり(抑制され)、彼の頭と脊椎の関係に自由が戻りました。
すると、不安定だった座位バランスは自然に整い、呼吸は深まり、喋りも滑らかになったのです。
外部刺激への「反応の仕方」を変えただけで、彼の身体本来の機能が勝手に働き出した瞬間でした。
5.手を触れずに座位を変える「リハビリ」
理学療法士として、今回はほとんど彼に触れていません。しかし、彼が「他人の視線」という刺激に対して、どう自分を使い、どう反応するかというプロセスを一緒に見直したことで、座位保持も発声も、そして何より本人のマインドも劇的に変化しました。
「リハビリだけど、リハビリじゃない。でも、これこそがリハビリの本質」。
アレクサンダー・テクニークの知恵を借りながら、彼が「自分自身の使い方の主導権」を取り戻した、素晴らしい時間となりました。
今回のリハビリで伝えたのは、
発表のテクニックではなく、「自分の守り方(整え方)」。
手を使わなくても、刺激への反応ひとつで座位は変わる。
アレクサンダーテクニークを通したこのアプローチが、
彼の日常をもっとラクに、楽しくしてくれることを願っています。
実は今日が、発表当日。うまくいったのかなー?と思いつつ、綴ってみました。
yeah!!