今日のレッスンは、関西サッカーリーグ、チェントクオーレハリマ所属の貫名航世選手からの「フォームを見てほしい」という依頼。


私はフォームも見れなくはないのですが、あまり好きな分野ではなく、とにかく話を探っていくことに…。

すると話を聞いていくうちに、もっと深いところにテーマがあるのが見えてきました。
​それは、「自分のことを気にしているつもりで、実は全然気にできていなかった」ということ。

そして、「こうあるべき」という制限だらけの気にし方をしていた、ということです。


​1. 「タイム」というプレッシャーが奪う、自分への意識
​まずは実験。ストップウォッチを出して「ロングブレス(息を吐く)」をしてもらいました。
1回目は普通に。
2回目は「タイム測るで!」とプレッシャーをかけて。
そしたら、測り始めた瞬間、体が後ろにギュッと縮こまって、声まで動揺してました。「タイムを出さな」という結果に意識がいき、自分の身体のことは、気にしてるつもりで全く気にできてへんかったわけです。
​3回目、あえて「頭や首」を気にしながらやってもらうと、タイムという結果以上に「無理なく声が出せた」という、気付きを得られていました。そして、自分でも結果に意識が及んだときに、頭や首が固まるのを理解してくれはりました。


​2. 「正しいポジション」という制限を外す
次は、彼の「走り出し」の癖について。いつも走り出しのときに、前屈みになって、下に頭や上半身を下げてしまうということに気がついていて、それに対して

頭をちゃんと背骨の上に乗せなアカン」と、

一生懸命に自分の頭の位置を気にしてはりました。でも、これって実は「正解の形」に自分を押し込める、制限のある気にし方なんです。
​私はこう伝えました。
「頭は『乗っときなさい!』って命令せんでも、そもそも勝手に乗ってるもんやで。そうでなきゃ生きていかれへん(笑)。どんな動きを選んでも、頭は絶対そこにおるから大丈夫」
​「正しい位置に置こう」という努力をやめて、もっと広い意味で自分全体を信じてあげる。
そうやって「気にし方の制限」が外れたとき、彼本来のしなやかなフォームが自然に現れてきました。

​3. 「理想の形」を追いかけるのをやめたとき、アイデアが湧く
さらに話は深まって、足首のコンディションが悪い時の話へ。
「そしたら、体の調子が悪い時はどうしたらいいですか?」
​彼からそんな質問が出ました。特に足首のコンディションが崩れて、それが体全体に響いてる時、どう対処したらええんか……。
これには私もちょっと考えました。彼が欲しいのは、足首そのものの解決策なんか、それとも体への影響を最小限に抑える方法なんか。

そこで、ちょうど質問前に彼がコンディション確認のためにやってた「ステップを上がるトレーニング」をヒントに、一つ問いかけてみたんです。


​「ステップに上がるその瞬間、君は何をしてる?」


​彼はこう答えました。
「自分の中の『理想の感覚』を探してる感じです。でも、それが見つからんでも無理やり動いてしまいますね」
​あぁ、なるほどな。
「正解の感覚」を追いかけて、今の自分を置いてけぼりにしてる状態。
​そこで私はこう提案しました。

「『理想の形』を探すのを一度横に置いて、まずは自分の頭と脊椎について考える時間を作ってみよう。その上で、ただ『登ろう』っていう自分の意識に素直に従って動いてみて」
​すると、彼の中で劇的な変化が起きたんです。

今までになかった『股関節のアイデア』が、みつかった

​理想のフォームを必死に追いかけるのをやめたことで、体が本来持ってるスムーズな動き……つまり股関節の連動が、勝手に、でも鮮やかに動き出した瞬間でした。

​4. 公園の石ころ遊びで見つけた「自分に戻る余地」
最後は、タイム走(指定距離を制限時間内に走る)のときの途中から覚える腰の違和感について。


これには公園の石をベンチに移すゲームを通して、プレッシャーがかかった時にどう自分を気にするか体験してもらった。
​1回目は焦って自分を見失い、石をポロポロ。
2回目は、始める前に「頭と脊椎」について気にしてもらい、これに伴って生じる視界の変化がもたらす「自分と道具との距離感」を確かめる準備の時間をとって、「自分の状態を気にし続けること」を唯一のルールにしました。

​結果、パフォーマンスは劇的に向上。
彼は気づきました。「プレッシャーがかかっても、ちゃんと自分に戻る余地(スペース)は作れるし、気にし方次第で身体はいくらでも変わる」ということに。


​おわりに
​今回のレッスン、私は何かを「教えた」わけではありません。
本人が、「自分の気にし方のクセ」に気づき、その制限を外して、より自由な視点で自分を観察できるようになった。 そのきっかけを渡しただけです。
​表面上のフォームを直すより、この「自分への向き合い方」が変わることの方が、スポーツ選手にとっては一生もんの武器になる。そんなことを改めて確信したセッションでした。



yeah!!