4─6月期実質国内総生産(GDP)は市場予想よりマ

イナス幅が小さく、東日本大震災からの順調な回復を示したが、市場の反応は鈍い。株価


の急落で消費マインドが落ち込んでおり、ロイター/ミシガン大学の8月米消費者信頼感


指数が約30年ぶりの低水準となるなど、外需の先行きに警戒感が強まっているためだ。


リスクオフの流れが一巡したとしても、米消費が下振れれば、株価やドルなどの上値は重


くなるとみられている。


 


 <米消費落ち込みを警戒>


 


 4─6月期実質GDPは3期連続のマイナス成長となったが、前期比マイナス0.3%


と市場予想(マイナス0.7%)よりもマイナス幅が小さかった。自粛ムードが徐々に和


らいできたことで消費の落ち込みが少なかったほか、民間在庫投資もサプライチェーンの


寸断で生産が大きく落ち込んだ前期の反動増でプラスに寄与するなど震災からの立ち直り


が示された結果となった。


 


 ただ市場の反応は鈍く、午前の日経平均.N225 は3日ぶりに反発したものの、徐々に


上げ幅を縮小する展開。商いは薄いが「CTA(商品投資顧問業者)やヘッジファンドな


どの短期筋が9000円より上で売っている」(外資系証券トレーダー)という。円債先


物は小幅ながらプラスとなり、リスクに対するマーケットの慎重ムードは続いている。


 


 市場が警戒感を強めているのは米消費動向だ。7月の米小売売上高は前月比0.5%増


と今年3月以来の大きな伸びとなったが、株価の急落で「逆資産効果」が働く可能性があ


るほか、先行きの不透明感の強まりが消費を抑えると懸念されている。


 ロイター/ミシガン大学の8月米消費者信頼感指数(速報値)は54.9で、前月の


63.7から大幅に悪化。1980年5月以降、約30年ぶりの低水準となった。


1987年のブラックマンデーや2001年の米同時多発攻撃、2008年のリーマンシ


ョックなどの後よりも厳しい消費マインドの落ち込みに市場の懸念は強まっている。


 失業率の高止まりや賃金の停滞に加え、米債務問題をめぐる政治の混乱が消費者信頼感


を圧迫したとみられており、オバマ政権の評価については、否定的にとらえる回答が全体


の61%を占め、歴代政権の評価としては過去最悪となった。


 


 シティグループ証券エコノミストの村嶋帰一氏は消費者信頼感指数の低下が消費減少に


直結するかはわからないとしながらも「最近の株式相場の下落は、家計の純資産価値の減


少を通じて貯蓄率を押し上げ、個人消費を下押しする公算が大きい」と指摘している。


 リスクオフの動きは一巡しており、自律反発的な動きが出る可能性もあるが、米経済へ


の不安が強いなかでは株価などの上値は重いとの見方が多い。


 


 <薄商いの円債市場>


 


 午前の円債市場は前週末の米債高を受け、国債先物は小高く寄り付いたものの、積極的


な買い材料に欠ける中で、すぐにマイナス圏に転落。その後、プラス圏に再浮上したもの


の、方向感に乏しい展開が続き、値幅は10銭にとどまった。週明けに加え、夏季休暇に


入ったマーケット参加者も多く、出来高は5000億円に届かなかった。


 


 現物債の取引も盛り上がりに欠けた。その中で、10年ゾーンはしっかり。同ゾーンを


めぐっては、官庁系の存在が買い安心感を誘っている、との見方が出ていた。


 


 円債市場をめぐっては、海外金利の低下を受け、買いが先行するものの、その後は益出


し売りで値を消す展開が続いている。日銀の一連の緩和措置を織り込んだ中短期ゾーンの


金利低下余地が限られる中で、長期金利もすでに1%近辺まで低下していることから、投


資家は上値追いに慎重だ。


 SMBC日興証券マーケットアナリスト、土井俊祐氏は円金利が米金利に追随しない理


由について「昨年のブルフラットから金利が急上昇した経験が金利低下抑制に寄与してい


る可能性がある」と指摘。その上で「ファンダメンタルズでみても、世界経済の先行きは


怪しくなっているが、日本は震災の復旧・復興の内需が期待できる。財政も世界的には削


減する方向にあるが、日本はある程度出さないといけない。このあたりの方向性の違いも


ある」との見方を示している。


 


 こうした状況は、ロイターが実施した週次JGB調査(第8回)結果にも表れている。


今週末の長期金利が先週末と比較して「横ばい」と予想する市場参加者は53.4%とも


っとも多かった。「低下」から「上昇」を差し引いた、市場の強弱感を示すブルベア指数


JGBBBI=はプラス26からプラス12に低下。米金利が低下する中での「横ばい」予想


は、上値の重さを反映したものと言えそうだ。


 


 <外為市場でも短期筋中心の動き>


 


 外為市場も薄商い。午前のドル/円は76円後半で底堅い動き。夏季休暇で本邦実需勢


の参加が細る中、海外短期筋によるドル/円、クロス円の買い戻しが目立った。スイス国


立銀行(中央銀行、SNB)がユーロ/スイスフランの相場について下限の設定を検討し


ているとのスイス地元紙の報道を受け、ドル/スイス、ユーロ/スイスがショート・カバ


ーで急伸。 ドル/スイスの上昇がドル/円の下値を支えた、との意見も出ていた。


 


 ドルは朝方の安値76.79円付近から77.10円まで上値を伸ばした。ユーロ/円


も109.53円付近から110.27円まで上昇した。「株価が戻ったので、リスクオ


ンということで、豪ドル/円などをいったん買い戻す動きが出ている」(ファンド・マネ


ージャー)という。豪ドル/円は79円半ばの安値から80円前半まで上値を伸ばした。


 


 豪ドルは前週、株価の乱高下とリスク回避の広がりから急落し、投機筋や個人投資家も


ロング・ポジションの圧縮を余儀なくされ、対ドルでパリティを割り込む場面も見られた。


しかし、豪ドルはこの日、再び堅調な足取りを見せた。


 「豪ドルの過熱感は収まってきている。世界景気が下振れし、豪州の利下げ余地が現実


味を帯びるという事態にならない限りは、豪ドルが再びパリティを割り込むことはないだ


ろう」と野村証券金融市場調査部・為替ストラテジストの高田将成氏は述べている。


  


 ユーロは1.1270スイスフラン付近。スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が、ス


イスフランの対ユーロ相場に目標を導入する協議を行っているとのスイスのソンタング・


ツァイトゥング紙の報道を受け、一時1.13スイスフランまで上昇した。スイスフラン


/円CHFJPY=Rは朝方の高値98.30円付近から一時97.17円付近まで下落した。


 

11日の欧米株が反発したにもかかわらず、12日午前

の日経平均は伸び悩んだ。フランスの格下げ懸念をはじめ欧州ソブリンに対する信用リス


クへの警戒、乱高下する欧米金融株への不安など不透明な外部環境、円高が企業業績に及


ぼす悪影響が計り知れないことが相場の重しとなっている。仏・ベルギー・スペインによ


る金融株の空売り禁止措置が発表されたことで、いったんは市場の不安心理を和らげた


が、アジアの銀行では仏大手銀への与信枠打ち切りやカウンターバーティーリスク見直し


などの動きが出ており、不安要素を抱える欧州に対して市場の厳しい見方は変わらない。


危機脱却に向けた欧州の対応力に懐疑的な見方が広がる中で、サルコジ仏大統領とメルケ


ル独首相が来週16日パリで会談する。両首脳が協議するユーロ圏のガバナンス強化や国


際問題の内容に注目が集まる。





 <株価、買い一巡後に上げ幅縮小>





 日本株は11日の欧米株高の流れを引き継ぎ、日経平均は買いが先行し前場序盤で2営


業日ぶりに9000円を回復した。足元ではテクニカルで売られ過ぎのシグナルが出てい


るうえ、PBR1倍水準と割安感もあり下値を拾う動きが出ているという。ただ、円高継


続が上値の重しとされ、積極的には買いづらいとみられている。株式市場筋によると、8


月限日経平均オプションの最終決済に関わる日経平均のSQ(特別清算指数)は9054


円49銭となった。SQ算出に絡む売買は「やや買い越し」(準大手証券)という。




 日経平均は序盤の買い一巡後は上げ幅を縮小、前場中盤に9000円を再び割り込ん


だ。三田証券株式営業部長の倉持宏朗氏は「高寄り後に欧州勢のまとまった売りが出て上


値を抑えられている。欧米の金融株が乱高下し海外投資家の不安心理が収まっていない。


現在の円高水準では先行きの企業業績にも不安が残る」と指摘した。TOPIXも下げに


転換。週末を控え調整売りが重しになっているという。市場では「米国株が乱高下してお


り、市場心理はまだ安定していない。ドル/円も76円台が定着しつつあり、買いづらい


地合いだ」(中堅証券)との声が出ていた。




 日中は引き続き為替動向やアジア株の値動きに左右されやすいという。大和証券・投資


情報部部長の高橋和宏氏は日本株に割安感が強まっているほか日銀による指数連動型上場


投資信託受益権(ETF)買い入れ期待などが下値を支える」と話しているが、外部環境


が依然落ち着かず、積極的には買いづらいとの見方が多い。引き続き円の先高警戒感が強


いほか、週末要因で様子見が広がりやすいと想定されている。




 日経225オプション<0#JNI*.OS>のストライク価格8750円のプット9月限は足元


で30%台で推移。国内証券の株式トレーダーは「下値警戒感が強く、8000円台前半


のプットの買いもみられる」と話す。EU域内での金融株の空売り規制で欧州はまた下落


すると同トレーダーはみている。





 <ドルは76円後半で小動き>





午前の外為市場でドルは76円後半で小動きとなった。前日スイス国立銀行のジョルダ


ン副総裁がスイスフランをユーロにペッグさせる可能性を示唆したことや、ベルギー・フ


ランス・イタリア・スペインが空売り禁止措置を発表したことなどを受け、金融市場は若


干の落ち着きを取り戻し、ドルの下値リスクは一時的に後退している。


 


 この日はお盆休みを控えた事業会社やアジア中銀が共に動意薄で、午前の出来高は低調


だという。ドルは朝方の高値77.02円から一時76.78円付近まで下落したもの


の、目先の下値不安は広がっていないという。ユーロは1.42ドル付近を中心とする値


動きで、前日ニューヨーク終盤から小幅安となった。


  


 市場では、政府・日銀による介入警戒感が根強い。このため「マーケットは若干のドル


・ロングになっていて、介入しても効果が上がりにくい状態だ」(外為アナリスト)とい


う。


 また、76.25円以下では海外勢によるドル・プットの買いが目立つ一方、


79.00円には50億ドル規模でファンド勢によるドル・コールの買いがあるとされ、


「介入でドルを持ち上げれば、ファンド勢を儲けさせるだけ」(同)との声も上がってい


る。


 野田財務相は12日、為替市場について「一方的で偏った動きが続いている」「きょう


も市場の状況を注視する」と述べた。また、介入効果をこの時点で明確に言える状況では


なく、もう少し見定めて判断する、との見解を明らかにした。


 前日の東京市場終盤にドルが76.30円付近まで下落し、最安値の76.25円に迫


った際に、政府・日銀はレート・チェックを実施し、ドルが約1円急反発した。


 


 「ユーロ圏のドミノ倒しは、ギリシャからスペイン、イタリアに飛び火し、とうとうナ


ンバー2のフランスにまで及んだ。残るはドイツだが、対外債権国で経常収支黒字国であ


り、さすがにドイツまでは格下げの話は及ばないだろう」と三井住友銀行市場営業推進部


チーフストラテジストの宇野大介氏は言う。他方、「火の粉は既に最後の駒である米国に


飛び火している以上、マーケットにおける構造は変わらないだろう」と同氏は指摘し、ド


ル安リスクが市場から消失したわけではないとの見方を示した。


 


 <国債先物は小反発>




 午前の国債先物は小反発。前日の米債安などから益出し売りが優勢で始まったが、日経


平均株価の伸び悩みを材料に142円割れの水準には押し目買いがみられた。


 現物債も先物とほぼ同様な動きとなった。前半は中期から超長期ゾーンにかけて利回り


が上昇し、イールドカーブはパラレルに上方シフトした。銀行勢などからの利益確定売り


との観測が出ていた。中盤には超長期ゾーンを中心に利回りには上昇圧力がかかり、カー


ブはスティープ化の形状となった。終盤は各ゾーンに押し目買いが入り、金利上昇幅を縮


小させた。長期金利は8月2日以来の高水準である1.050%を付ける場面があった。




 11日の米債券市場では、米30年債入札が低調だったことで国債価格が大幅に下落。


米10年債利回りは終盤の取引で2.34%と、前日終盤の2.14%から上昇した。イ


ールドカーブはベアスティープ化。新規失業保険申請件数が予想より少なく、過度な米景


気悲観論が後退した。




 相場展開について「長期金利が1%割れを維持できなかったこと、米国債との連動性が


低下していることなどから円債市場の上値追いムードは後退した」(SMBC日興証券・


野村真司チーフ債券ストラテジスト)との見方が出ていた。米国債との連動性が低下につ


いては、復興需要の顕在化に伴う景気回復期待のある日本に対して、景気の二番底懸念の


ある米国、財政拡大方向にある日本に対して、財政緊縮方向にある米国と、投資環境の差


が背景にあるという。


 もっとも、米国景気の二番底懸念、欧州財政問題の再燃に伴うマーケットの不安心理が


収束したと見る向きは少なく、先物の142円割れ、長期金利の1.050%では押し目


買いが入っており、底堅い展開となった。

11日の東京市場では、日経平均が反落し、ドルが過去

最安値圏の76円台でもみ合いとなるなか、円債が続伸するという典型的な「リスク回避


相場」となった。米国に続きフランスが格下げ対象になるとの懸念から欧米株式が急落し


たことや、米国が実質ゼロ金利を2年間続けることにコミットしたものの株価下支え効果


が長続きしなかったことなど、金融証券市場の不安定要因が目先、後退する気配は見られ


ない。




 


 <株価は円高を嫌気> 




 株式市場では日経平均が反落し、9000円台を割り込んでいる。フランスの格下げ懸


念で欧米株が急落したことや、対ドルで史上最高値に迫る円高などが警戒され、主力の輸


出株中心に売りが先行した。朝方発表の6月機械受注が予想を上振れたことやGLOBE


X(シカゴの24時間金融先物取引システム)の米株価指数先物高などが下値を支えした


ものの、反発力は鈍い。




 内閣府が11日に発表した6月機械受注は、民需の受注額(季節調整値)が前月比


7.7%増の7897億円となり、企業の設備投資意欲が底堅いことを確認したが、「足


元では米欧の財政不安に起因する急速な円高・株安が進行しており、企業マインドが急激


に悪化している可能性がある」(SMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏)と


して、先行きの下振れリスクを警戒する声も出ている。


 「日本株は引き続き海外の株価動向に振らされる展開だ。今後も円高は株価の下押し要


因となる。主力メーカーはドル/円の想定為替レートを80円に引き下げているが、足元


の水準はそれを下回っている。日本全体としては原材料の輸入価格などの点でコスト減と


いったプラス面はあるが、このまま70円台定着だと輸出企業を中心に収益が厳しくな


る」とみずほ総研シニアエコノミストの武内浩二氏は言う。


 8月26日に行われるバーナンキFRB議長のジャクソンホール講演が次の注目材料だ


が、「仮に追加緩和策への言及があったとしても、ドル安・円高の進展が懸念される。ま


た低金利政策の長期化は景気回復がそれだけ遅れるとの解釈にもつながるため、景気敏感


株としての日本株にはポジティブといえない面もある」(大手証券)とみられている。




 <ドルは最安値圏でのもみ合い>




 ドル/円は下値もみあい。前日に欧州債務リスクが意識されたことでリスク回避の動き


が強まり、ドル/円は過去最安値(76.25円)に迫った。しかし、アジア市場に入る


と米国株先物が上昇に転じたことをきっかけにリスク回避ムードがやや和らぎ、ドル/円


は下げ渋っている。




 ステート・ストリート銀行金融市場部長、富田公彦氏は「本来、問題のないはずのイタ


リアやフランスに対しても、市場が悪いシナリオを次々と描いてしまっている。しかし、


それを明確に否定するだけの材料がない」と懸念する。


 昨年の段階では、ギリシャなど具体的に資金繰りが問題になっていた周辺国に対しては


資金支援が市場の求める答えになった。しかし「今年は状況が違う。イタリアやフランス


まで支援対象に含めた場合、十分な資金を用意することは困難だ。マーケットを納得させ


るにはどうしたらいいのか、答えが見えてこない。こうした不透明感を短期筋に利用され


ている」(富田氏)という。




 ユーロは、アジア時間早朝までに対円で108.27円まで売り込まれて、5カ月ぶり


安値をつけた。ドル/円でもリスク回避の円買いが優勢となり、前日76.34円と過去


最安値に迫った。


 しかし、アジア時間に入るとグローベックス市場で米国株先物がじりじりと上昇に転


じ、リスク回避ムードは徐々に和らいだ。ドル/円については介入警戒感も強く、野田財


務相が円高について「国際社会と連帯しながら、市場を注意深くみていく」と語ったこと


をきっかけに、ドル/円は76円後半から77円付近に並んでいたストップロスを次々に


ヒット、一時は77.23円まで上値を伸ばした。ストップロスをつけ終わったあとは伸


び悩んで、76円後半でもみあっている。


 


 <円債は続伸>




 円債市場では国債先物が続伸した。前日の海外市場でニューヨーク債券市場が上昇した


流れを引き継いだ。財務省が正午締め切りで実施する5年物の国債入札をめぐり、事前に


「カネ余りを背景に順調に通過するのでは」との観測が浮上したことも下支えした。


 一方、店頭長期、超長期ゾーンで銀行勢からとみられる売りも観測され、取引一巡後は


上げ幅を縮めた。「きょうの入札が順調になるのではとの観測が相場上昇を主導していた


が、店頭で長期・超長期に売りが出た影響で、相場全体が押し込まれている」(外資系証


券)との声が出ている。


 前日の欧米市場では、銀行株を中心に株価が大幅反落となる一方で、米10年国債入札


は好調で米独債利回りは一段と低下した。海外債券市場の堅調さを受け、円債相場は5年


入札を順調に消化して堅調に推移するのでは、との見通しが多い。


 ドイツ証券の山下氏は「5年国債入札は新発0.3%クーポンだが、米国の時間軸強化


が効果を発揮しそう。2013年半ばまで金融緩和を継続する場合、円高リスクを考えれ


ば日銀はFRBより後にしか金融引き締めには動けないという連想が働きやすい。0.3


%台からの金利低下余地は限られようが、上昇余地も限定的だろう。銀行勢からのニーズ


が期待できる」と話した。

注目された9日の米連邦公開市場委員会(FOMC)

は、実質ゼロ金利継続を約束する時間軸政策の強化により、米国債格下げをきっかけに


混乱した世界市場の火消しを図ったが、東京市場で株などのリスク資産に資金移動する


動きは限られ、かえって金融政策に限界があることを浮き彫りにした。各国で財政健全化


が求められる中では景気刺激を狙った大掛かりな財政出動も見込めず、市場のセンチメン


トが好転するには、依然として高いハードルが待ち受けている。





 <日本株、一時9100円台を回復>





 10日午前の東京株式市場で日経平均株価は4日ぶりに反発、一時9100円台を回復


した。前日9日の米株式市場でダウ平均が急反発した流れを引き継ぎ、これまでの「世界


連鎖株安」に歯止めがかかった。


 背景には、米連邦準備理事会(FRB)が9日公表したFOMC声明が好感されたこと


がある。声明で、実質ゼロ金利の見通しに関して「長い期間」から「少なくとも2013


年半ばまで」と表現が修正され、市場では「強力な時間軸を示した」(RBS証券の福永


顕人チーフ債券ストラテジスト)との受け止めが多い。


 三菱東京UFJ銀行の伊野鉄平アナリストは「一歩踏み込んで期間を明示したことが市


場の安心感につながった」と指摘する。大和証券投資情報部の西村由美次長は「VIX指


数が高水準で相場変動率が高まっている中、市場期待より長めに時間軸を設定したことは


評価できる」と話す。




 株価急落に歯止めがかかったことで債券価格もひとまず安定した。東京証券取引所の長


期国債先物は反発し、長期金利の指標10年最長期国債利回りは一時、前日比0.025


%低い1.015%と、心理的節目の1%に再び迫った。


 通常、株が買われれば債券価格は下落するが、「9月中間期末の株価次第で債券部門で


の益出し要請が強まりかねない」(邦銀)との懸念があった。このため、景況感とは裏腹


に需給動向に左右されやすかったが、「株価や外貨建て資産にらみで苦渋の選択を迫られ


ていた地方勢の債券売りは、ひとまず止んだ」と、ある外資系金融機関の関係者は明かす。





  <リスクオンには、なお距離>





 もっとも、FOMC声明はこれまでのパニック的な混乱を沈静化したにすぎず、「リス


ク・オンの志向に反転するには依然として距離がある」(欧州系銀行)との声は絶えない。


 ステート・ストリート銀行の富田公彦・金融市場部長は、FOMC声明の効果について


は認めるが、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が4日に景気の先行きに悲観的な発


言をしたことを例に挙げ、「ドル/円もドル/スイスフランもさほど戻しておらず、為替


相場は、世界的に景気がいまひとつなので積極的にリスクは取れないという見方に傾いて


いるのだろう」と話す。


 JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは「実質的な効果があるとは思えな


い。市場が動いたこと自体が、市場関係者の安心感につながったのでは」と手厳しい。




  <ファンド解約の観測も>




 10日午前の為替市場では、円相場が一時76円78銭まで急騰、「四半期末の解約期


限を前に、外銀がドルを売っているのではないか」(外資系金融機関)との思惑が浮上す


る場面があった。午後に入っても76円台後半での推移を続けており、依然として円高圧


力が根強い。


 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の長谷川治美ストラテジストは「金融市場の不安


定化にブレーキがかかりにくいのは、市場が当局による政策出動余地が小さいことを見透


かしているから。リーマン・ショック後の局面ではG20による総額5兆ドルの財政出動


や、中央銀行による超緩和政策や信用緩和、さらに問題金融機関への公的資本注入などで


危機を乗り越えたが、今度は金融危機のツケを引き受けた国そのもの、しかも先進国の財


政問題が危機を増幅している」とみる。


 「時間軸効果の賞味期限が薄れて株安が再燃すれば、バーナンキ議長はQE3(量的緩


和第3弾)に踏み切るだろうが、何かミラクルが起きるとナイーブに信じている参加者は


少数派だろう」と、前出の長谷川氏は指摘する。

 欧米株が急落した流れを引き継いだ9日の東京株式市場で

は、朝方から全面安の展開となり、日経平均は約5カ月ぶりに9000円の大台を大きく


割り込んだ。世界景気懸念や欧州信用不安などを背景にしたリスク回避の動きが一段強ま


り、投資マネーは日米独の国債や金などの安全資産に向かった。株安連鎖阻止への財政政


策に手詰まり感が見える中、今夜の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、連邦準備


理事会(FRB)による量的緩和第3弾(QE3)の可能性に注目が集まっている。


  


 <VIX恐怖指数が急騰、株価急落>




 米株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラ


ティリティー・インデックス(VIX指数)は8日、48.00と前日(32.0


0)から急騰し、2009年3月以来の水準を付けた。米国株式市場は、恐怖指数の高ま


りとともにNYダウが前週末比634ドルの暴落となった。「VIX指数はこの水準を上


抜けると次の節目は52.5付近」(国内金融機関)として、相場先行きに悲観的な声も


漏れる。




 東京株式市場でも、全面安のなかホンダ(7267.T: 株価 , ニュース , レポート )やソニー(6758.T: 株価 , ニュース , レポート )、三井住友フィナン


シャルグループ(8316.T: 株価 , ニュース , レポート )、コマツ(6301.T: 株価 , ニュース , レポート )、武田薬品工業(4502.T: 株価 , ニュース , レポート )など多くの主力銘柄が


年初来安値を更新した。業績が大幅悪化した東京電力(9501.T: 株価 , ニュース , レポート )も早朝の報道でその見通し


が報じられ、大きく下げた。ソウル株式市場の総合株価指数.KS11 や香港株式市場のハ


ンセン指数.HSI などアジア市場でも混乱が続き、手控えムードも強まった。「現物、先


物ともに処分売りが止まらない。株価は下方にオーバーシュートした状態だが、海外要因


での下落だけに下値が読みにくい」(準大手証券)という。




 <金先物が高値更新、長期金利は1%割れ>




 一方で NY金先物GCcv1が1オンス1700ドルを突破して最高値更新。リスクを


取る市場参加者が極端に減少する中で「リスク資産を打った資金が国債や金といった安全


資産に流れ込んでいる」(国内証券)として、一斉にリスクポジションを解消する動きが


鮮明になっている。円債市場では、10年最長期国債利回り(長期金利)が一時、0.9


75%と昨年11月以来の最低水準を付けた。




 為替市場では円が幅広く買われ、ドル/円は77円後半から下落して4日介入後の安値


を更新。安全通貨とされる円やスイスフランに資金が逃げ込んでおり、クロス円中心に円


が上昇した。豪ドル/円は一時76円半ばまで売り込まれ、きょうの高値からは3円近い


下げを演じた。中国の7月CPI上昇率がロイター予測を上回り、中国利上げが意識され


たことも豪ドルを圧迫した。ドル/円の下落ピッチはクロス円に比べれば緩やかだが、着


実に円高が進行しており「(介入などの対応を)何もしなければ、76円台に突っ込む」


(国内銀行)との見方が広がっている。




 <米格下げで財政政策に手詰まり、QE3に期待する声も>




 こうした連日の金融市場混乱を受けて、9日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での


政策対応に期待する声が出ている。米国格下げで財政不安を抱える政府に対する市場の評


価が一段と厳しくなる中、「投機筋は景気浮揚策として財政政策に手詰まりであるのを見


越して株に売り浴びせている。FRBがQE3などの何らかの政策対応をしなければ市場


が持たないだろう」(国内証券)という。奇しくも、バーナンキ前FRB議長がジャクソ


ンホールでQE2に可能性に言及して1年が経過しようとしており「まるでQE2をきっ


かけに株式相場が持ち直した昨年の類似相場の様相」(先出の国内金融機関)との声もあ


る。




 三田証券株式営業部長の倉持宏朗氏は「ソブリン債務問題がフランスの格下げ懸念にま


で波及し、世界的な株安の連鎖が止まらない」としながらも「オプション権利行使価格の


8750円近辺では買い戻しも入っている。今後の日米欧当局のコメント次第では(株価


は)リバウンドに向かう可能性もある」とみている。