今日観てきました。
劇場内がとても寒くて、カーディガン羽織ってもまだちょっと寒いぐらい。
これから観に行かれる方は羽織ものがあるといいかもしれません😊
ひとりの男が警察署で取り調べを受けていた。
現場に残った指紋や防犯カメラに映った姿は完全にその男。
しかし、男は容疑を完全否認。
「ぼく……本当にやっていないんです」
困惑する刑事。
その男は解離性同一性害、多重人格者だった。
激しい取り調べに疲れた男は気絶したように眠る。
目を覚ますとそこは、留置署の外だった。
ひとりの人格が言う
「逃げようぜ」
逃げろ。逃げろ。好きなだけ逃げろ。
絶対に自分からは逃げられないから。
普通に生きたい男がたどり着いた場所は……。
※以下、内容触れます。
バグステ見て気になった木村くんが出演されてたので見に行きました。
他にも今回の主役の毎熊くん、千田くん、碕くん、バグステのキャストさんがたくさん。
ある家に盗みに入ったアオくんが警察に自首してきたけど、取り調べに対して「知りません」ばっかりなので刑事さんたちが怒ってしまったり困惑。
アオくんの中に4人の人格がいる。
留置場で人格たちが話し合って逃げることに。
人格たちが「アオは眠らせておけ」って言ったの、すごくビリー・ミリガンを思い出しました。
(ビリーも本人の人格になると自殺しようとするから、他の人格たちにずっと眠らされてた)
アオくんにはコウくん(兄)とダイくん(弟)がいて。
お母さんはにこやかだし、アオくんの事件のことでコウくんに引っ越しを提案されても「コウも私も悪いことはしてないんだから引っ越す必要はない」って言ってたのは強いなと思いつつ、なんだか様子がおかしいなと思っていたら。
だんだんと家庭環境が明らかになって。
お母さんが生んだのはダイくんだけで、コウくんとアオくんはお父さんの前妻の子どもなんだね。
お父さんはほぼ家にいないし、帰ってきてもアオくんたちに攻撃的だし。
お母さんはダイくんのことだけ溺愛してて、ダイくんもアオくんをいいように使ってる。
いろんなことをいつも押し付けられてたアオくんのことをコウくんはずっと見て見ぬふりをしていて。
でもそのことに罪悪感をずっと持ってたコウくんは、留置場から逃げてきたアオくんを連れて一緒に逃げようとする。
「行こう」って促されたアオくんが「お母さんは、」ってコウくんの腕を掴んで聞くところ、振り返ったコウくんの表情がものすごくよかった。
新幹線で鹿児島まで行って、船で沖縄へ行くことに。
中学生ぐらいの時に家族旅行で沖縄に行く計画が持ち上がった時の話は切なかった。
コウくん「ごめん、覚えてない」って言ってたけど、覚えてないんじゃなくて覚えてないふりしてるんじゃないかと思った。
他にも、回想場面ではお母さんとダイくんだけが旅行に行ったり。
アオくんが「僕たちも行きたい」って言ったら遮るように「ごはん、適当にやってね」って言われちゃって。
お母さんの目がとてもいいですね。
目だけで圧力をかけるというか。
その後、アオくんが盗みに入った家の霧島さんと実は関係があったことが分かったり。
霧島さんの役は日替わりゲストの方。
私が見た回は谷水くんでした。
谷水くんの霧島さんもすごくよかった。
にこやかなのにどす黒いというか(褒めてる)。
お父さんが借金踏み倒して、その返済をするために風俗で働いてるお母さん。
でもプライドが高くて生活水準を下げられないし、まわりにもばれたくない。
霧島さんの「俺、あなた好きだな」っていうセリフの言い方が好き。
お母さんのネイルもすごくて、これも近所の人とかママ友に見栄を張るためにしてるのかなとか思ったり。
お母さんに対する脅しの写真(風俗で働いてる写真)が入ってる霧島さんのケータイをアオくんは盗んだんだね。
でもケータイは盗まれたものだけじゃなくてもう1台あって、全然状況は変わらず。
刑事さん2人も捜査であの家族が何かを隠していると感じる。
その中で、海野さんがアオくんを「そういうやつには見えない」と。
鷲宮さんは合間に防犯カメラの映像見たりしてるけど、心配だけしてる海野さん、鷲宮さんに「じゃあおまえは何してるの?」って聞かれた時の詰まる感じもとてもよかったです。
鷲宮さんと海野さんはアオくんのお友達のタイヨウくんのところへ聞き込みに。
前の場面でアオくんの家に様子を見に行ってたし、仲がいいのかと思いきや。
刑事さんたちにアオくんの人格たちのこと話したり。
アオくんと一緒に逃げてるコウくんから電話があったことをダイくんに教えたり。
タイヨウくんとダイくんの場面もよかった。
お互いに仮面が外れた感じ。
タイヨウくんが舌打ちしたところとかね。
逃げているアオくんとコウくんは乗客にバレてしまって、一旦京都でおりることに。
アオくん、しばらく人格たちの声が聞こえないと。
それはコウくんのことを信頼し始めてるからかと思ってたけど、そうではなく、人格たちが「なかったことにするのか」と怒っていると。
「なかったことにする」というのは、実はお父さんを殺して遺棄したこと。
ここの場面も辛かった。
お母さんに指示されて。
アオくんの人格のひとりがお母さんを殺そうとするけど、お母さん「やってみろよ。殺せ」とか言っちゃって。
憎らしい。
結局アオくんが止めるけど。
この時ダイくんのことをチラッと見るのが切ない。
お父さん殺すのもアオくん(の人格のひとつのマコトさん)にやらせて。
劇中では明言されてなかったけど、霧島さんの家でケータイ盗んだのも、絶対お母さんに指示されたからだと思う。
アオくんとコウくんは京都で逮捕される。
鷲宮さんがお母さんのところに行くけど、お母さんは自殺未遂。
アオくんが取り調べで「自分だけ助かろうとしました」っていうところも、素直に取り調べに応じるアオくんを見て海野さんが「自分からは逃げられないと分かったからじゃないですか」っていうのも、逃げるか逃げないかの選択を迫られたコウくんが霧島さんに言った「でも何かしらから逃げることになりますよね」っていうセリフも、全部とても重い。
アオくんはTシャツを脱いで、それで首つりを。
Tシャツ脱いだ時に体中が傷だらけだったのも悲しかった。
アオくんがコウくんと一緒に逃げてるって知ったあたりから、ダイくんがお母さんとかタイヨウくんにいろいろ言うけど。
その変わり身の早さよ。
「今まで黙ってたのは自分の身が安全だったから」って言ってたけど、あなたはそれに便乗してアオくんとコウくんを(特にアオくんを)苦しめて貶めてたのにって思ったらイライラしてきたw
ダイくんの「お母さんが死のうとしたのは自分のため、でもアオ兄はそうじゃなかった」みたいなセリフも白々しいとしか思わなくて💦(褒めてるよ!)
何回も見たらいろんな登場人物での見方ができるのかもしれないけど、初見だとやっぱりアオくんに感情移入しちゃうよね。
タイヨウくんもアオくんが自殺したニュース見て「アオ死んじゃったよ」って軽い感じ。
お友達に「仲良くなかったっけ?」って聞かれて「ほどほどにって感じかな」って。
お家まで遊びに行ってたのにね。
刑事さん二人のところもよかった。
前の場面で『ここ、雨の必要ある?』って思ってたので、ここで回収されてビックリでした。
確かに、雨だとだるい。
鷲宮さんの「生きていくことは面倒くさいことばかりだから」っていうのもよかったです。
ちょっと救い。
そして最後のシーン。
アオくんの取り調べの場面で、
海野さん「助けてほしいんだろ?」
アオくん「僕、助けてほしいなんて言いました?」
これはとても考えさせられる終わり方。
ほんとにいろいろ考えさせられる舞台でした。
『生き逃げ』っていうタイトルを知った時は「生き切って逃げる」っていう意味なのかと思ったけど、そんなことなかった。
みんな何かしらから逃げてるよね。
些細なことから大きなことまで。
コウくんが劇中で言ってたことも分かるし。
向き合おうと思ったけどそれも逃げてることになるのではないか?とか。
タイヨウくんみたいに面倒になると逃げるとか。
ってかさ、警察沙汰とかそんな大きなところまではいかなくとも、タイヨウくんみたいな人っているよね。
あっちこっちに『良かれと思って』あれこれ言いふらして、当事者とかが揉め始めるとフェードアウトするやつ。
それとか、自分に火の粉が飛んできそうになったから逃げるとか。
でも、誰でもそういうところは持ってると思う。
アオくんの最後がああいう結末だったのはとても悲しいけど。
「家族のため」と思っていろんなことに耐えてきたアオくんだったけど、もうああするしかなかったのかな。
中の人格たちも納得してたんだろうかってちょっと思ったりもして。
ああ、もしかしてアオくんは自分から逃げたのか?
「誰でも自分自身からは逃げられない」っていうのはもちろんその通りなんだけど、アオくんはそこから逃げたってことなのかしら。
つらいな。
「逃げる」っていうと悪いことのように感じるけど、全然そんなことない。
まわりに助けを求めたり、逃げることも時には必要で。
でもうまくいかなかったり葛藤があったり。
難しいし、いろいろ考えさせられる舞台でした。
みんな演技が上手。
碕くんは何役も演じてて、とてもすごかった。
器用なのだね。
毎熊くんはこの舞台が終わったら一旦休業するそうで。
ゆっくり休んで、また戻ってきてくれたら嬉しいです。
木村くんもよかったです。
劇中はいつもニコニコしてるタイヨウくん役だったけど、ダイくんとの会話の時の舌打ちがね、タイヨウくんの裏の顔というか、本性を垣間見えたようでよかったです。
千田くんのコウくんも、お母さんに怯えてる感じとか、アオくんから目をそらすところ、「新幹線乗って安心しちゃった」っていうところ、あと上にも書いたけど、アオくんに腕つかまれて振り返った時の表情がとてもよかった。
みんなほんと上手なので、物語に入り込めました。
とても重い内容だったけど、観に行けてよかったです。
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