これまで、いくつかの民芸品や雑貨をご紹介してきましたが、最近気になることがあるのでここで書いておこうと思います。


まず、生産地であるイスカルやパタンバンに行っても在庫がほとんどないことは買付け日記でお話しました。


理由は、メキシコ民芸品はほとんどが手作り。機械で作っているわけではないので大量生産ができないのです。

そして材料費もかかるので、大抵は材料費として代金の半額を払ってもらってから作業にとりかかります。


そして大量の受注をするのはほとんどがアメリカ人。

前金を受け取って作業を開始し、1~2ヶ月かけて仕上げて一気にアメリカに輸出する、というわけです。


メキシコには古代から受け継がれている伝統工芸や技術がたくさんありますが、残念ながらメキシコ国内ではもうそれらへの関心がなくなってきているのです。

メキシコ人の興味を引くのはやはり、アメリカやヨーロッパの洗練された機能的なファッション。

世代が若ければ若いほどその傾向は強いのです。


なのでメキシコ人はほとんど民芸品を買いません。だから職人さんも在庫を置かないのです。

また売る方にも民芸品を売るだけでは生活していけない、という現実があります。

民芸品作りの村の若い人たちはほとんどがアメリカに出稼ぎに行っている、というのが事実です。


こうして村などに伝わる伝統的な手工芸は次世代の担い手を失ってきました


今現在、伝統的な技術を持ち合わせているのは高齢の職人さんだけなのです。


オアハカにはテワンテペックという海岸地方の町の有名な刺繍のドレス”テワナ”があります。

オアハカの数ある民族衣装の中で一番華やかで、知名度の高いものです。


Mexico Desconocido 知られざるメキシコの旅


Mexico Desconocido 知られざるメキシコの旅



色とりどりの大きな花の刺繍が施された見事な衣装なのですが、その分値段も高いです。

お祭りや行事があるときに、女性はこの衣装を身につけ華やかに着飾りますキラキラ



オアハカの人にとっては日本の着物のような感覚なのでしょう。


しかし、このテワナでさえもう作れる人がいなくなり、最近売られているものは古着がほとんどだとか。

古着をリサイクルしてバッグやクッションカバーにしているものもあります。


そして先週、このフィガロヴォヤージュという雑誌の表紙になっている刺繍のブラウスを作っている村を訪ねたのですが・・・

フィガロボヤージュ メキシコ (HC-ムック)
¥980
Amazon.co.jp

遅い時間に行ったので市場に行ったらブラウスのお店は閉まっていたのですが、開いていた普通の洋服を売っているお店で他にどこで売っているかと聞くと、そのお店の奥にしまいこんであったものを取り出しました。

最近じゃこの村の人たちはこの服は買わないのでしまっていたとのことでした。


店番をしていたのは16歳ぐらいの若い女の子おとめ座だったのですが、自分の叔母さんがこの刺繍をしているというのでわざわざ叔母さんの家まで案内してくれました。


道中、どうしてあの刺繍ブラウスはあまりないのかと聞くと

「あの刺繍をできる人がもうほとんどいないから」と答えました。


「あなたはどうしてやらないの?刺繍に興味ないの?」と聞くと、

「興味はあるんだけど・・・やるきっかけがなくて」


私はこのとき何だか悲しい気持ちになりましたかお


こうして素晴らしい技術が段々と失われていくのだな、と。

目に見えるものがなくなっていく寂しさより、もっと深い寂しさを感じました。

この刺繍の持っている歴史、伝統、技術、意味・・・文化そのものが消えていく悲しみ。


まるで昔栄えたピラミッドが廃墟と化してしまうかのように。



そして彼女の叔母さんのお家に着き、刺繍のドレスワンピースやブラウスを見せていただきました。

ビビットな色彩で、細かい刺繍・・・

しばらく眺めていたくなるほど素晴らしかったです。



Mexico Desconocido 知られざるメキシコの旅


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下の写真の、花の下にある小さな人の形の刺繍は、”Hazme si puedes”(アスメ・シ・プエデス)という手法で、「私を作れるものなら作ってごらんなさい」という意味だそうです。一針一針数えながら縫い、一つ間違えるともうそれで失敗作となってしまうぐらい難しいのでこの名がついたそうです。


そしてこのブラウス、メキシコにしてはびっくりするほどのお値段でした目


でもこうした作り手さんの苦労を目にしていると、この値段を払う価値はあるのだとは思いました。


今回この雑誌に掲載されたことで、またこの刺繍ブラウスの知名度が上がり、復活するきっかけになってくれればこの村にとってはうれしいことでしょう。



最初は自分の好きな民芸品を集めるためだけに村めぐりを始めましたが、こうしていろいろな現実を知ることになって、民芸品を紹介することはメキシコ文化を救うことにもつながるのだと思い始めました。


実際メキシコ政府は今のこの民芸品の状況を危惧して、民芸品の村に資金援助をしたり、若い世代のための職人養成学校を作ったりしています


私もこのブログを通して少しでもお役に立てたら、と思いますクローバー