この日は、目覚めが妙に良かった。
まだ辺りの暗い、午前五時。
すっと起き上がり、部屋の角のロッドケースに手を伸ばす。
昨夜譲り受けた、千崎一平作のリミテッド穂先。
ティップのオレンジは、ナンバーワンの象徴と言えるカラー。
ぐっと握りしめ、三ヶ月間の思いを込める。
今日が最後だ。
前回までの釣行。七連敗を喫する。
自分との戦いの日々が続いていた。
ただ、この日は不思議とプレッシャーはなく、ゆっくりとした流れからスタートをきった。
船場に着く前に、一平さんの言葉を思い出す。
砂をもっていきんしゃい。
僕の理想のダンゴ像を話した時に、一平さんがくれたアドバイス。
ハンドルを海辺にむけ切った。
砂浜におり、粒子の細かい砂を、バケツ一杯入れる。
準備はできた。
船場につき、準備を済ませ、養殖小割りに船を走らせた。
到着。
すぐにタックル準備をした。午前六時半。
一投目。
ガン玉をうち、広角で岩虫を投げ込む。
その間、ダンゴを混ぜる。
一平さんのアドバイスだった。
ゆっくり、しっかりダンゴを混ぜる。
混ぜ終わり、回収したとき、岩虫はまったくかじられてなかった。
が、心には大きなゆとりが生まれていた。
これまで、焦りから、手返しが早く、単調になり失敗を続けていた。
が、今回はどこかゆっくりとした気持ちで釣りに挑めていた。
それからダンゴを打ち出し、いざ本格的に釣り開始となった。
つづく
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