会話の一部分を切り取ってみても
僕は目の前にいる貴方と
一体どこまで意志の疎通が出来ているのだろう
と思うことが増えた。
そうして自分の気持とは別に
僕はどんどん無口になってしまう。
例えば世界が一つの言語で統一されていたならば
これほど便利なことはないだろう。
けれど便利なことと、生きていく楽しさは多分違う。
君の言う「楽しい」と
僕の言う「楽しい」は
少しどこかずれている。
君の言う「辛い」と
僕の言う「辛い」は
思いの重さに差がある。
君の言う「死にたい」と
僕の言う「死にたい」は
ずっと分かりあえないままでいる。
でも、多分、きっとこれでいいんだ。
完全な意志の疎通が行えないから
僕らは顔を合わせて色んなことを話す。
目を見る。仕草を見る。
笑ったり、怒ったり、泣いたりする。
絵を描き、歌を口ずさみ、踊ったりもする。
持てる全てで相手に伝えようとする。
だから、きっとこれでいいんだ。
完全に伝わらないからこそ
僕は一つ一つを大切にしていきたいと思う。
いなくなってしまった君が最期に残したものを
知りたいという欲求を僕は一生消しされないだろう。
でも、多分、きっとこのままでいいんだ。
君が残した謎々が
一縷の望みとして
今僕を生かし続けている。
僕の気持ちは誰に伝わるのだろう。
誰にも伝わらなくてもいいや。
それでも一つ一つ大切に
僕は言葉を重ねていくよ。