『2軍』と『ファーム』 | ケチャップ オフィシャルブログ「ケチャップ茶屋」Powered by Ameba

『2軍』と『ファーム』






【『2軍』と『ファーム』】

プロ野球2016年シーズンもいよいよ開幕。

スポーツ新聞誌面上や野球ネットニュースなどでは、
『ルーキー◯◯選手開幕一軍!』
など、新戦力への期待高まる記事に心が躍ります。
と、同時に、
『△△選手は開幕2軍スタート』
などの記事も目にします。この記事が出ると、「△△はやっぱりダメか?!」や「△△選手はもう年齢的にも限界でしょ」などといった類の残念なコメントをネット上で目にしてしまいます。
私もプロ野球でお仕事をさせていただいていますが、この世界でお仕事させていただくまでは、前述コメントされた野球ファンの方々と全く同じような感覚で、野球好きの友人と△△選手のことを話してしまっていました。
だから、偉そうに言える口ではないのですが、私がプロ野球の世界で13年お仕事させていただいた経験から、『1軍』『2軍』の捉え方をお伝えできればと思います。

まず私はスタジアムDJという球場・スタジアムでのアナウンスなどを担当するポジションですが、『2軍』というワードは使用せず、『ファーム』と表現している。『1軍』=上、『2軍』=下という図式は野球ファンならずとも、この言葉を聞いただけで容易に連想できるでしょう。確かに実力的に『1軍』にいる選手がチーム内の競争から勝ち上がったトップメンバーであることは間違いない。しかし、『2軍』にいること、『1軍』にいないことが=トップメンバーでないことではないのだ。

わかりやすい例から。絶対的なレギュラーキャッチャーがいます。そのレギュラーキャッチャーが試合に出続けているため、『1軍』で控えとしてベンチに置いておきたいが、『2軍』で経験を積ませておきたいというキャッチャー。この場合、『2軍』にいることをそれほど『下』に評価したりしていないはずです。しかも、そのキャッチャーが若ければ若いほど。
この例えで、何人か実際の選手が頭に浮かんだかもしれませんが、キャッチャーの例でそのまま話を続けると、ベテランになればなるほど、「あのキャッチャーはずっと2軍にいるからダメだな」と思われがちですが、1軍監督や首脳陣からは、「あいつはいつどんな苦しい時が来てもスタンバイしてくれている」という信頼感のもと、1軍へのスタンバイをしながら、『2軍』で若いピッチャーの長所を引き出すリードをしていたりします。
今、キャッチャーを例にお話しましたが、これはどのポジションの選手でも、チーム編成上こういったケースが生じるのです。

『1軍』=上、『2軍』=下という図式ではないことをお伝えするためにもう一つ例を。
『2軍』でのゲームでの成績が芳しくない選手が『1軍』登録されるケースがある。すると、「なぜ□□選手が一軍に上がったの?」といった声がネット上などであがったりする。これもまた『2軍』のゲームを頻繁に観戦できない方からすれば、そういう疑問を持たれても不思議ではありません。私もスタジアムDJで『2軍』のゲームをたくさん担当させていただいて、やっと『1軍』と『2軍』の野球の《チカラ》の差以外の《チガイ》を感じましたから。
若い選手が豊富な『2軍』のピッチャー陣。マウンドさばきも巧みな、制球力ある『1軍』ピッチャー陣と対戦してきた『1軍』のバッターと、若さを前面に勢いよく腕をふり、制球力よりもまずは力でバッターをねじ伏せたい『2軍』のピッチャーとの対戦。ある引退された元選手から、この対戦についての心境を聞いたことがある。
「『1軍』が長いと、対戦したことがないピッチャーだからまずそのピッチャーのデータが乏しいですし、キャッチャーの配球も、組み立てが『1軍』と違うんです。まだストレートで来るのかっていうぐらいストレートで攻められたり。そして正直なところ何よりファームのピッチャーの制球力を信用できないので、(デッドボールなどで)ケガをしたくないので、踏み込んで打つことに恐怖心がありましたね。」
とてもリアルなお話でした。この心境、リアル過ぎて、「ビビらずにいけよ!」と思われる方もいらっしゃると思いますが、自分がバッターでも「この荒れ球は怖いな。ケガだけは避けたいな」と思うような光景を何度も目にしたことがあります。
野球の《チカラ》の差以外の《チガイ》、『1軍』の選手だから、『2軍』のゲームでは簡単に結果が出るものではないということを理解していただけると嬉しいです。なので、私は『1軍』、『ファーム』という表現にこだわりたい。もちろん『1軍』で活躍し、優勝することがプロ野球選手として最高の栄誉であるが、『ファーム』=『下』ではなく、『1軍』で活躍するため、チームが優勝するために『ファーム』が大切な場所であるからだ。


今回このコラムを書くことは、私の中では勇気がいることでした。伝えたいニュアンスが上手く伝わりきるだろうか。誤解を招いたりしないだろうか。書き終え、皆さんに読んでいただいている今も、大丈夫かなという不安は尽きません。ただ、今回のコラムを書く際に、元選手の方々や『ファーム』の関係者などにたくさんコメントをいただいたりし、「是非伝えてほしい」と後押しを皆さんからいただきました。


プロ野球各チームに所属している支配下登録選手、育成選手みんなそれぞれの思いを胸に、人生を賭けて、それぞれのフィールドで頑張っています。 

《プロ野球選手はヒーローです!》
2016年シーズンはどんなドラマが待っているのか?1試合でも多く、野球場に足を運んだり、J SPORTS野球中継で、選手の熱いプレーにご注目ください!
そして、是非『ファーム』のゲームの観戦にも出かけてみてください。
特にオリックス・バファローズのファームホームゲームはイベント盛りだくさんで楽しいですよ(^O^)/

2016年が選手、ファンの皆さんにとって素敵なシーズンになりますように。