Tight rope Life is to be continued... more...
目覚めるとアラームは9:15を表示している。
アレ?
アラームは昨夜、就寝前に通常の7:05から、間違いなく8:15にセットしたのに…
青森行きの飛行機は確か10時何分かだったことを思い出し、そんな時間ないぞ!と思いつつ、JALからの登場予定メールをチェックする。
ほのかな期待はあっさりと裏切られる。
搭乗時刻は10:20!...ってことは、スーツを着て、ネクタイは後で締めるとして…家を出る迄にあと7分くらいはかかるなぁ、定刻15分前ってことは羽田空港で10:05迄にチェックインしなければならないから、40分で着かなければ乗り遅れる…ってことを一瞬で考えたつもりだったが、時計を見ると既に9:18分だが、ウィシャツに袖は通していた。
とりあえず、駅とは反対方向に向かい小滝橋通りに出る。
空港方面は新宿に向かっており、何故かタクシーの空車は少ないので、逆方方向高田馬場方面で捕まえた。
『申し訳ないが、羽田空港まで最速でお願いしたい。』言った瞬間、ラジオから渋滞情報が流れる。
『箱崎付近では渋滞していませんように…』、心の中で全く信仰していないイエスキリストや仏様にお願いする。
何度もココロの中で『どうか、羽田空港方面は…』、、、ラジオにお願いしつつ耳を澄ます。
しかし、その肝心な部分は隣をノロノロとすり抜ける大型トラックの爆音にかき消されていく。。。
トラックが過ぎ去った時、ラジオの声は交通渋滞情報から調子のいいおじさんのゆったりした声に代わっていた。
さりげなく、且つ、非常に謙虚に運転手に最高の敬意を表した声で聞いてみる。
『10時迄に着きそうですかね?』
彼はキッパリとハッキリと悪びれるでもなく答える。
『無理ですね。』
オレ、信心してもいないキリストさんや仏様に手を合わせたことを瞬間悔やむ。
するとドライバーがボソッと『芝公園を回って行けば、ひょっとすると…』と一縷の期待を抱かせる。
『とにかく可能性がある方でお願いします。』オレの口調はもはや懇願の域に達していた。
とりあえず、最悪の事態を想定して旅行会社のS氏に連絡を取らねば…
アレ?。。。携帯...朝飯のおにぎりと一緒にコートのポケットに突っ込んだ筈なのに…
考える間もなく、LINEの無料通話をプッシュするが繋がらない。
四面楚歌だ。
考えることは放棄して行方を見守ることにする。
9:52、高速の表示に『空港西』の表示が出る。
あと8分。
正確に言うとチェックイン締切り迄は13分。
5分はチェックインカウンターまでの歩行時間だ。
運転手が再び不穏な質問を投げかける。
『ターミナルは国際線、国内線1、2の何処ですか?』
ココロの中で一瞬の安堵が粉々に崩れていく。
そして、また激しく根拠のない推測が駆け巡る。。。
その間に口が勝手に動く。
『国内線、JAL。多分、手前だから第1。』
運転手、『道が変わっちゃったんですよね。。。』
しかし、、、タクシーは何事もなかったかのように、スルスルとJALのロゴマークの前で止まった。
9:58。
また、生き延びた。
今日の青森の商談は今年のオレの一番大きなプロジェクトの一つだったのだ。
もちろん、無宗教のオレはクラスJのシートにゆったりとおさまると、イエスキリストや仏様へのお礼のことなどすっかり忘れていた。
商談は結局、かなりスムーズに行われ、オレが持ち込んだ企画はほぼ全部採用された。
オレの56歳の第1歩目は至極順調なスタートと言えるだろう。
まさにこれはオレの人生の縮図でもなんでもなく、ただのルーチンなのだ。
約束時間に関する『遵守』という概念が完璧に無い。
しかし、何となく生き延びてきた。
まさにこれは綱渡り人生だ。
今、帰りの飛行機の中で、オレのココロの中には、今朝の行き場の無い緊張感への反省は全くない。
それでは最後に絶妙な曲で!ばいちゃ
