【中国古典を詠み解く引き寄せ短歌シリーズ】第155回です。
《菜根譚》からご紹介します。
【書き下し文】
『山林泉石(さんりんせんせき)の間(かん)に徜徉(しょうよう)して、塵心(じんしん)漸(ようや)く息(や)み、詩書図画(ししょずが)の内(うち)に夷猶(いゆう)して、俗気(ぞくき)潜(ひそか)に消(き)ゆ。
故(ゆえ)に君子は物を玩(もてあそ)びて志(こころざし)を喪(うしな)わずと雖(いえど)も、また常(つね)に境(きょう)を借りて心(しん)を調(ととの)う。』
《 菜根譚 後集 45 》
【語義】
『徜徉(しょうよう)』… 逍遥と同義語で、目的もなくぶらぶら歩くこと。
『夷猶(いゆう)』… ゆったりとそこに心を留めておく。徜徉とは対になる。
『物を玩(もてあそ)びて~』… 外界のものに気を取られ本心を失うことに対する戒め。
『境(きょう)』… 自分の心に相対する現象界の事物。ここでは山林泉石や詩書図画などを指す。
【訳文】
「山深い静かな林や泉や石などの自然を散策していると、世俗の塵に汚れた心もだんだんとなくなる。また、詩書や絵画を楽しんでいると、身に沁みついた世俗的な気質も消えてしまう。
だから、君子たるものは道楽にふけって本心を見失うことを戒めねばならぬが、一方ではいつも世俗化しないように外の環境に触れて心を調えることも必要である。」
参考文献:岩波文庫《菜根譚》、講談社学術文庫《菜根譚》
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前回に続き自然や書物に触れて心を整えることの大切さを説く一節です。
人は知らず知らずのうちに世俗的な塵に汚れてしまうようです。
それは我欲や物欲で、こうした欲は際限なく膨らんで塵のように汚れ心を惑わせます。
欲に溺れないためには自分を律する努力もさることながら、自然や書物に触れることが我欲を簡単に抑える一番の効果があるといえそうです。
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人間は
欲がなければ
生きられず
欲が過ぎれば
良く生きられず
困ったら
木々に訊ねて
みればよい
枝葉が揺れて
教えてくれる
悩んだら
書物を読んで
みればよい
その行間に
導きがある
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自然の中で過ごしてこそ自然体
本日も
ご覧いただき
ありがとう
ございます
【R050222】