号外
安倍元首相が銃撃されるという、大変な事件が起きてしまった。
私は駅前で配っていた号外をもらい、家に持ち帰った。
学校から帰ってきたうめてんがその号外を見つけ、
「なにこれ」
と驚いた顔で聞いてきた。
私「安倍さんっていう前の首相が銃で襲われたんだって。大変な事件だから、号外新聞が出たんだよ」
うめ「えっ」
うめてんは、安倍さんが血を流して倒れている写真をじっと見ていた。
あ、やばいかな?と思ったら、
やはりやばかった。うめてんは大変なショックを受けたようで、取り乱しはじめた。
うめ「なんで?犯人は誰?逮捕されたの?死刑なの?なんで銃があるの?私も撃たれるの?嫌だ、絶対に外に出たくない」
私「うめてんは大丈夫だよ、一般人だから。安倍さんは政治家だから狙われるリスクがあったんだよ」
うめ「政治家って何なの。私は政治家なりたくない。政治家なったら死ぬんでしょ。絶対いやだ」
私「うめてんは政治家にならないよ。政治家というのは……やりたいって立候補した人の中から選ばれるから」
うめ「ぜったい立候補しない。死にたくない」
何か話がズレている気もするが、うめてんの気持ちを落ち着かせるのが優先だ。
私はしばらくうめてんをなだめ続けた。
大丈夫、犯人はつかまったし、うめてんを攻撃する人はいないよ。と、何度も言い続けた。
うめてんにはまだ大変な事件だと理解できないだろうと思って油断していたが、号外は目につかないところに隠しておくべきだった。
うめてんに先日「おじいちゃん(私の父)が大怪我をして命があぶない」という話をしたときは全く意に介せず、「へーそれがどうかした?」という態度だったのに、この違いは何なのだ。
……写真、か。
血を流して倒れている写真を見たからか。
あと銃撃というのも、ショックな言葉だったのかもしれない。
今後も気をつけないと。
色々と理解できるようになりつつある。特に視覚に訴えてくるものには注意しよう。
大人でもショックだし、気持ちの整理をつけるのが難しいことだ。子供にどう伝えれば良いか、よく考えなくては。
ご逝去されたとのこと。
心よりお悔やみを申し上げます。