前回最後に触れたように「アルコールは少量でも体に悪い」という研究結果を踏まえて、「素朴な疑問を大切にして、論理的に考えてみよう」シリーズ第6弾「お酒」の話題その2です。ネタも切れたので、これがシリーズ最終回となります。

 

<酒は少量でも体に悪い>

 

 これまでは「酒は百薬の長」と言われ(一方でタバコは「百害あって一利なし」ですもんね)適量なら体にいい、とされていた「お酒」ですが、18年8月に医学誌「ランセット」に「アルコールは少量でも体に悪い」と発表されたのを皮切りに、次々とそれを裏付ける研究結果が出てきていて、「健康への悪影響を最小化するなら飲酒量はゼロがいい」というのが新たな定説になろうとしているようです。

 

 これまでの定説は、1週間に数十g程度までの飲酒が心血管疾患のリスクを下げ、グラフ化すると「J」字型のカーブを描く(「Jカーブ効果」と呼ぶらしい)というものだったようです。

 ただし、この「Jカーブ効果」についても、心疾患や脳梗塞などの病気についてはその傾向が確認されているものの、高血圧や脳出血、乳がんなど、飲酒量が増えると少量であってもリスクが着実に上がる病気も多くあることが分かっていたようです。
 でも総合的に飲酒と総死亡率の関係性を見る場合には、少量飲酒による心疾患などへの影響の方が大きいことから、トータルではJカーブとなるということでした。
 つまりトータルで比率を見ると、「酒は百薬の長」の裏付けになるというわけで、お酒好きの方々は大手を振って飲酒を正当化(?)出来ていたと思います。

 

<タバコの次は酒?>

 

 ところがここに来て、冒頭で挙げたような研究結果が発表され、最近の風潮からすれば、「タバコ・バッシング」の次は「酒バッシング」か!? というのがもっぱらの話題となっています。
 <文春オンラインの記事タイトルに「どうやら『健康警察』の次のターゲットは「アルコールは少量でも身体に悪い」らしい」(19.12.26)なんてのも出てます>

 ちなみに、WHOの外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、アルコールをタバコと同じグループ1 (確実な)発がん物質とみなしているそうです。

 

 タバコの時に問題になったのは、自分の健康もさることながら、副流煙による「他人への影響」が大きかったですが、この点についてもアルコールは分が悪いようです。

 

<他人への影響>

 

 タバコ・バッシングの最中、喫煙所での会話では、よく「タバコのこと言うなら、酒の影響の方がでかい」という話題が出ていました(タバコを正当化するという事ではなく、なんでタバコばっかり、という負け惜しみみたいな感じでしたが)。

 副流煙は分かるが、タバコが直接の原因で人を大きく傷つける事は(歩きタバコで子供に当たる、とか、火事の原因になる、とかはあるけれど)、酒に比べれば頻度も規模も全然少ないんじゃないか? と。


 ちょっと考えれば、酒が原因となった事件や事故は非常に多い事は誰でも思い当たるでしょう。

 飲酒によって、怪我をしたり暴力沙汰を起こす、飲酒運転での事故、アル中、酒乱などによる事件等によって、病気以外の死亡率をも高めている……

 

 あなたの周りにも(あるいはあなた自身の経験でも?)色々な「お酒の武勇伝」を持っている人が必ずいますよね?
 酔ってケンカしたり、怪我したり、電車を乗り過ごして終点の駅のベンチで寝てたり、カバン無くしたり取られたり、飲み会でセクハラ、パワハラ、記憶なくして~ 等々、酒さえ飲んでいなければこんな事にはならなかったのに……という事件はいくらでもあります。これらを考えれば、明らかに「他人への影響」は大きいですよね。(タバコの影響に比べて、より直接的ですぐに影響する)

 

 副流煙と同じような事では、電車の中で酔っ払いが隣にくると、匂いで気持ち悪くなる人も多いのでは? (これからの研究で、酒の匂いにも有害な物質が含まれている、となったら、副流煙と同じ扱いとなるかもしれません)

 

<酒バッシングが広まったらどうなるか? ……「禁酒法」再び?>

 

 さて、タバコの例を考えた時に、このまま「酒バッシング」的な風潮が高まり、過剰な反応が増えて行くとどうなるのか、考えてみましょう。

 

 タバコは体に悪い。副流煙で他人にも悪い。
 →喫煙所を設けろ →喫煙所からも匂いが漏れる、ベランダで吸っても煙が流れて来るからダメ →喫煙所も無くせ →衣服に付いた匂いも悪いからタバコ吸った人は赤ん坊を抱くな
 →結局は、自分の家でも「吸うな」
  となって行きました。

 (本当にダメなら売らないければいいのに、合法的に売っているものを吸ってはいけない、という大いなる矛盾!)

 

 お酒がこれと同じようになったらどうなるんでしょう?

 まず、前回の「飲み会」の考察でも出て来ましたが、会社主催や半強制的な飲み会は出来なくなりそうです。なんせ「体に悪いものを飲む会」になってしまいますから。

 (ただ、酒の場合、飲酒だけでは収まらず、料理に使ったり、いろいろな用途があり影響が非常に大きい。体に悪いからと単純に飲酒を止めるだけでは、アルコール・ゼロにはなりません)

 

 アルコールを含む飲料や食品には「健康を損なう危険性があります」との表示が義務付けられ、「分酒」が当たり前になって「飲酒席」が必要になり、酒を飲める場所がどんどん減って「禁酒」がトレンドになり、酒を飲んでいると白い目で見られ、お酒を飲む人は採用しない企業が出て来る。ますます酒飲みの肩身は狭くなる……
 行きつく先は「禁酒法」ですか?
 (タバコもまだ売っているし、「禁酒法」は一度懲りてるはずなので、そうはならないとは思いますが……)

 

<なんでも「悪い、危険」→「禁止」になる風潮>

 

 最近の傾向として、少しでも危険な物や「悪い」となったものは、すぐに「禁止」の方向に行く(リスク回避のための「とりあえず規制」)のが気になるというか、ある意味怖いと思っています。(もちろん今回の新型コロナのようなケースは別です)

 

 公園でも、ボール遊び禁止、子供が騒いでも通報される。砂場も衛星的でない、と無くなり、遊具もどこかで事故があればすぐ撤去される。

 昨年末は、除夜の鐘さえ、うるさいから、とやめたところもあったり、「サイレント盆踊り」なんて言う訳の分からない事にもなっている。(ああ、日本の伝統行事や風情が無くなっていく……)

 

 最終的に法律や条項で「禁止」に向かうのは、誰か(クレーマー、匿名の無責任な「善意の」人達)が通報したり文句を言うと、受け止める方が弱い立場になり、すぐ謝ったり、やめる、としないと炎上(逆上?)するから、なんですかね。
 (教師のなり手がいなくなるのも分かりますよね)

 

 今やキャッチボールやサッカーも、きちんとしたクラブとかに入らないと出来ないんじゃないでしょうか?
 子供の頃から色々やって身につけて、好きなこと探して、という事もし辛いし、危険な事も経験して対処を覚えたり、免疫をつけたりする事も少なくなって、才能も伸びなくなるんじゃないでしょうか?
 (そもそも、スポーツなんて可能性を考えたら危険だらけですから、最後はスポーツも全面禁止に?)

 

 「何でもハラスメント」の風潮も怖いですよね。
 受け取る側が「ハラスメント」だと思えば全てそうなってしまうような事が拡がって行けば、それこそ今の新型コロナでの自粛状態のように、他人とは極力接触しない社会を作っていかざるを得なくなります。

 

<結局は「ほどほど」がいいんじゃない?>

 

 コーヒーについても「体に良い」説と「悪い」説がありますし、他にもこれから調べていけば、実はこれまで普通に口にしていたのに体に悪いものって色々と出て来るでしょう。その度に禁止の方向へ行ったら、最後に残るものはどれ位あるんでしょう?

 

 話を酒(とタバコ)に戻すと、ヘビースモーカーや酒豪でも長生きしている人も沢山いますし、アルコールを飲むことで人生が豊かになり、生活の質が上がるという人もいるでしょう。
 人間は病気にならないためだけに生きているわけではないので、後は人に迷惑を掛けないように十分気をつける、他人への影響の部分だけはある程度の対策を(分酒くらいまで?)行う、という考えは、通用しなくなるんですかね?

 

 本当に危険な、事故率が高いのものは別として、何でもかんでも短絡的に禁止するのではなく、結局は
 「ほどほど」にしようよ!
 と、ある程度寛容に受け入れられる社会を作っていかないと、本当にディストピア小説に出てくるような暗い未来になってしまいそうで恐ろしく感じるのは、私だけでしょうか?
 みなさんどう考えますか?

 

 *6回に渡り長い文章をお読み下さった皆さん、有難うございました!