チェコは、伝統料理が抹消されるほど、宗教が失われるほど、
近年まで、ロシアによる過酷な共産国化コントロールを受けていた国なので、
(チェコは神の存在を信じる人の割合が、世界のうちでもかなり低い国なんだそうです。)
チェコ人は、ちょっと “違う” 人達かも知れないな、
などと思っていたんでけどね。
でも、ある田舎町に一泊した時...
バロックやルネッサンス時代の町並みは、ユネスコの世界遺産に指定されているらしいんですが、
レンタカーじゃないと行き難いというのもあって、観光客は少なく、
プラザには、子供を学校に連れて行く親子連れが歩いてたり、
買い物の帰り道のおばさんがベンチで休んでたり、
犬の散歩中のお爺さんが立ち話をしてたりしてて、
観光スポットを観光客に混じって観光することが、あまり好きではない私には、
地元の人達の生活に接することができる、最高な場所でした。
プラザに位置する泊まったB&Bの隣りのレストランで、のんびりとランチをしていると、
隣りのテーブルに、お婆さんグループがやってきたんです。
自転車で来た人もいたので、地元の人達らしく、
久しぶりの再会なのか、まぁ、まるで女子高校生達のようなはしゃぎようで、
とても楽しそうに話が盛り上がっていました。
少しすると、テラスの私達のすぐ横に車が留まり、
息子さんらしい人と共に、足の悪いご老人が車から降りてきたんです。
そのご老人も会合のメンバーのようで、隣のテーブルのお婆さん達は、
杖をつき、息子さんに支えられて、ゆっくりテラスに上がってくるご老人に、
嬉しそうに手を振っていました。
でも、一人のお婆さんだけ、慌ててテーブルの上にあった箱を袋に入れ、
足元に隠していたんですよ。
よく見ると、息子さんに支えて階段を上がっているご老人の手には、ケーキの箱がありました。
(チェコでは、お持込OKのようです。)
テーブルのお婆さんは、ご老人に花を持たせるために、
自分が持ってきたケーキを隠したようだったんです。
お婆さん達は、お母さんを連れてきた息子さんに、
「なんて親孝行なの。 うちの息子に、爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわ。」
と言っているのだと、
「じゃあ後で迎えに来ますから、母をよろしくお願いします。」
と他のお婆さん達にお願いしているのだと、
ちんぷんかんぷんなチェコ語でのやり取りを、勝手に解釈し、
憎み合い、殺し合いが多く、
ニュースをつけては胸が詰まる思いの、今の世の中、
どこの国の人達も自分達と変わらず、相手のことを思いやる人間であり、
思うこと、感じること、願うことは同じなのだと、
チェコの田舎町で、少し安心したんです。
食事が終わった頃、あれだけぴーちくぱーちくだったお婆さん達、
ひそひそと話をし始めたので、
主人に、
「静かになったね。 “どこどこの誰々さん、末期の病気なんだそうよ。
どこどこの誰々さん、亡くなったらしいわ。” とかウワサ話してるんかね。」 と言うと、
主人は、「いや。 嫁達の文句だろう。」
その辺も同じに違いないと納得し、世界平和の可能性を感じたのでした。 (笑)