回顧録: 息子への手紙 7 | グローバルに波乱万丈

Dear MY SON、

貴方が生まれた日が、お母さんにとって一生で一番幸せな日ということ。 お産の後だというのに、嬉しくて、嬉しくて寝れなくて、一晩中、「私の赤ちゃん、私の赤ちゃん...」って言いながら貴方を抱いていたこと。 お母さんいつも話してて貴方はよく知っているから、改めてここで書く必要はないわね。  

ディスコのお立ち台でボディコン着て踊っていた“冷めた娘”と言われた私が、貴方を抱いて過したあの夜、貴方達をこんなにも愛すに母親に変身したの。 まるで魔法をかけられたかのようだったわ。 

でも、父親って少し違うみたいね。 お腹の中で9ヶ月子供を抱えるわけじゃないし、やっぱり母親と同じような変身はすぐにできないのは仕方がないみたい。 前夫はもちろん、貴方の誕生をとても喜び、家族のために早く大学を卒業して頑張ろうという気持ちはあったみたいだけれど、まだ若かったから自分がしたいことが沢山あったようでした。 友達と出かけたり、生活苦しいのに数十万円もするバイクを買ったり... どうしてもっと貴方やお母さんのことを考えてくれないの、どうして私達を幸せにしてくれないのって、前夫のことを腹立たしく思っていました。 


でもね。 考えてみたら、私はいつも前夫に“幸せにしてもらおう”という期待ばかりで、彼を“幸せにしてあげよう”と思ったことはなかったような気がするの。 どちらかがどちかを幸せにするっていうものではなく、幸せは二人で築くものなのにね。 愛している人を幸せにすることが、本当の幸せなのにね。 そんな幸せの本当の意味を、その頃の私が理解できていたなら...


ある夜、また喧嘩になり、私、思ってもいないのに、「離婚する! 日本に帰る!」って言ってしまったの。 私がそんなことを言ったの初めてのことではなかっただろうけど、何故か彼は、「わかったよ。 君が本当にそうしたいなら、僕にはどうしようもないよ。」と、寂しそうに言い、その夜、結婚して初めてリビングルームのソファーで夜を過しました。 

前夫は完璧な夫とはほど遠い人でしたが、精一杯、心から私のことを愛してくれていました。 教会の決まりを破り、両親との間にあれだけの問題を起こしてでも、私のことを愛し続けた人です。 どんなに喧嘩をしても、例え背中を向けて寝てでも、夜は私のそばにいたい人でした。 

翌朝、早朝の授業があった前夫は、私と赤ちゃんの貴方が寝ている寝室に服を着替えに入ってきました。 私は前夜のことが照れくさく、彼が部屋に入ってくる寸前にベットの上で寝返り、クローゼットに背を向けたの。 謝らないといけないと思いながらも、意地っ張りな私は振り返ることができず、そのまま背を向けたまま、彼が貴方の頬にキスする音、アパートのドアを閉める音、バイクが遠のいていく音を聞いていました。 「帰ってきたら謝ろう。」と思いながら。

でも結局、私は前夫に謝ることはできませんでした。 その朝、交通事故に遭ったのです。


彼が植物人間だった一年半、「一瞬でいいから目を覚まして。 私に謝らせて。」 ベットに横たわる彼に囁き続けました。 

今でも、頭の中であのバイクの遠ざかる音が聞こえます。 

あの時、もし振り返っていたなら、最後にもう一度だけ彼の顔を見ることができていたのに... 私が最後に見た彼の顔は、私の言葉に心を痛めた寂しい顔でした。

あの時、もし振り返って彼の顔を見ていたら、きっと謝ることができていて... そして、もし謝っていたなら、彼の出かける時間がずれていて... そして、彼は事故には遭わなかったかもしれない...

そんな多くの“もし”が頭をよぎります。 

でも、人生、巻き戻しはできません。 あの時に戻って、振り返ることはできません。

本当の幸せの意味を理解できなかった馬鹿な私が、意地を張ったばかりに。 

続きは次の手紙で...


Love、MOM


追伸

誰かに伝えたい気持ちがあるなら、後回しにしてはいけません。 それが“I AM SORRY.”であろうと、“I LOVE YOU.”であろうと、伝えられるチャンスは二度と来ないかも知れないのだから、後回しにしてはいけません。 I love you with all my heart, and I will always love you no matter what. You are my son forever and ever.