なにもない海。波もなく鳥もいないし月もない。ただ、空いちめんに銀色の粉になって星が散るばかりの夜に、ひとりのいるかとひとりのくじらが出会った。『コドクもいいが「いっしょ」もわるくないな』ふたりともそうおもいました。
2.
いるかはくじらにてがみを書いた。【くじらはよく、ぼくのあたまをなでてくれます。そうするとやっぱりうれしくなります。】てがみをよんだくじらは、もとのようにたたんで口のいちばん奥にある、きれいな小箱のなかへしまった。
3.
陸を泳ぎたいと思っていたくじらはあるとき決心した。「よし。ぼくはパリまで旅をしてくる」いるかはすこしさびしい気もしたけれど、毎夜そらであえることを知ったので元気でねとくじらをおくりだした。
4.
たくさん海を泳いでパリについたくじらは噴水のある池に住むことができた。公園の池に住んでいるといろんなひとと仲良しになった。
5.
ところがある日、くじらはたかい熱をだしてしまった。からだがまっさかさまに、くらいふかい穴におちていくようだ。ほかのだれでもない。いるかが手をにぎってくれれば、どんなに安心して泣けることだろう。
6.
西の空低くに、いるか座を見つけたくじらはいるかといっしょにいるきもちになった。でも、はなしかけようとしては、ひとりなのに気付く。流れ星が星のあいだを走るのをみつけるたびに『元気になったらいるかのところへ帰れますように』といのった。
7.
「おかえり、くじら」
「ただいま、いるか」
くじらがパリから帰った日、ふたりは一日中おしゃべりをした。夜おそくになってもまだまだおわらないので話のつづきは明日にして、ねることにした。
8.
くじらは宇宙のはなしがすきだ。きょうもくじらは、めがねをかけて宇宙学の本をよんでいた。なかでも太陽をまんなかに点々とまわる星たちの話はきょうだいのようで、一番好きだ。
9.
「くじら。月はどのくらい遠いのかな」尋ねるいるかに、くじらはいるかのからだを地球にみたてて"このくらいのとこ"とまわってみせた。いちばん遠い星はどこか尋ねられ、また泳ぐことにした。ホクロのようになってもまだまだとまらず、とうとうどこにもいなくなった。
10.
いるかは地球になったまま待った。くじらが帰ってきたのは日が暮れようとするころである。いるかは、いそいでくじらにかけより、いった。「うちゅうって、さびしかった」
