学校の西洋造りの校門を潜り、下駄箱へ向かうと、見慣れた男がいた。

「よぉ鶫。朝からご機嫌な顔だな。朝から暴れたのか?」

嫌味な笑みを浮べるこの男は虎杖雀(イタドリスズメ)。
小6からの悪友だ。しかし最近俺の可愛い嫁入り前の妹(10)を見る目が怪しくなってきた。そろそろ縁を切ろうか迷っている。

「別にご機嫌でもねぇよ。それに暴れてねぇし。向こうが掴み掛かってきたから手を捻り上げただけだし。」
「その先は?」
「右ストレート鼻フック左ストレートパチギ膝蹴り背負い投げを選り取りみどりお買い得セットを提供しようとしたんだけど、その前に逃げやがった。」
「なんかコマンド入力みてぇだな。」

雀はわざと踵を潰して靴を履く。
雀が新しい靴を買ったのだと見せる時も、すでに踵は潰されている。
理由は知らない。どーでもいいしな。

「時に鶫よ、お前今日の体育の内容聞いたか?ケント柱だって。」
「ケント………なんぞそれ。」

初めて聞くスポーツだ。うちの学校は最新式の授業カリキュラムだから、ケントなんとかもその一つなのだろう。

「あれ、お前やったことなかったっけ。缶けりみたいな遊びだよ。小さい頃よくやったなぁ。」

違った。
最新式でもなければスポーツでもなかった。

「お前マジで知らないのぉ?」
「な、知ってるっつの!あれだ、名前にピンとこなかっただけだ!」
「あ、そう。んじゃ、ルール言ってみろよ。」
「柱を蹴り飛ばした方の勝ち。」
「小さい子が柱蹴り飛ばせるかよ。缶じゃねぇっての。」
「うるせぇな!お前は冗談も分かんねぇのか。」

本当は真面目にそう思っていた。
ヤバイ。このままだと雀は調子に乗ってこの事を他の奴等に言い触らす。絶対に。
五年間の俺データでみても98%の確率で言い触らす。
まぁ、パーセンテージの出し方なんて知らないんだけどな。


―朝、清々しい気で満ち溢れた朝。

なんて素晴らしいんだ。

小鳥の囀り、朝露の光る植物、下劣な男共の顔。

そんな野郎達に絡まれたら―……

「お相手するしかないよなぁ。」
「あぁ!?誰が誰の相手するって!?いいから金だせゴルァァッ!」

巻き舌すぎて聞き取りづらいブ男Aが俺の胸倉を掴む。

俺はブ男Aの手を捻りあげ、取り巻き2人のもとへ投げ飛ばした。

『うわぁぁっ!』

無様な叫び声を上げた男達は、素早く立ち上がると一目散に逃げていった。

「カッコ悪……」

さぁ、気を取り直して行こう。
我が学び舎へ。