忘れもしない小学校、五年生の寒い昼下がりでした。
親父とひとつ下の妹と一緒に家を出ました。親父の自転車には妹が乗り、
私は其の後を遅れまいと付いていきました。てっきり親父の好きな映画を               見に行くのかと思いうれしさ一杯でした。何故かって、映画を見るのも嬉しかったのですが、
いつもラムネと細長いセロハンの袋に入ったバターピーを買ってくれたのでした。
ところが、其の方角と反対の方角にいくでないか。
きょうは違う所に連れてってくれるのかと思いつつ、四、五十分歩いたでしょうか、
もう何処を歩いているのかわからない状態でした。
$苔の樹林帯のブログ着いた場所は大きな門構えの
屋敷の前でした。子供心に私はすぐに親父がこの家で借金の工面に来たのだと分りました。
私たち二人は、だしに使われたのだと分りました。朝からお袋と親父の言い争いを聞いていましたから。
又お袋が目を真っ赤にして泣いていました。時にはお袋が「どこか遠い所に行こうか」と幾たびかありました。寒い風の吹く中、私と妹は門の外で親父が出てくるのを待っていました。
三、四十分経って、やっと親父が出てきました。開口一番、「おまえら用が済んだで帰れ!」
と言われて「今から映画館に行くのではないの」と言うのをこらえていました。
そこで、親父は自転車にまたがり行ってしまいました。
寒さと不安一杯でしたが、今にも泣きそうな妹を見て、「さあ帰えろか?」と言ったのが精一杯でした。
どの道を帰ったらいいのか分りませんでした。そこで今来た道筋に鉄道の陸橋があったのを
思い出してその陸橋の階段を登り、家の傍にある球場の鉄塔を探しました。

$苔の樹林帯のブログ見つけました。あの懐かしい鉄塔を見つけました。その方角をしっかり記憶して、妹に言いました。
「家に帰ろう」と、、、、。