福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書/ディスカヴァー・トゥエンティワン
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福島第一原発の中で必死に働いた作業員の方の体験談をプロローグとして始まり、経緯をまとめた「第1部 事故・被害の経緯」、官邸の事故対応を含めた「第2部 原発事故への対応」、原子力ムラの構造に踏み込んでいく、「第3部 歴史的・構造的要因の分析」、国際協力の枠組みを検証した「第4部 グローバル・コンテクスト」。民間事故調の「真実、独立、世界」をモットーとする独自の視点からまとめられた報告書です。
(公式HPより)
ゆんたくです。
前回の投稿では“安全神話=原発は安全であるという漠然とした思い込み”が津波対策を軽んじ、遅らせてしまったという構造について紹介した。
今回はさらにその背景として、グローバルな文脈、特に国際レジームの中で日本の原子力行政が取ってきたスタンスについて見ていきたい。国際レジームとは、過去の事故の教訓を経て国際社会が積み重ねてきたルールや規範のことだ。
チェルノブイリ以降、国際レジームは原子力安全規制の程度を強化する方向に働いてきた。特にIAEAでは、加盟国専門家による総合評価のピアレビュー制度を整備し、その基準を精緻化していった。しかし、一方でピアレビュー制度には強制力はなく、締約国の自発的な原子力安全の維持・向上を促すソフトアプローチと呼ばれる手法をとっていた。
そういった中、日本は2007年6月にIAEAの総合原子力安全規制 評価サービス(IRRS)を受けている。
その時の報告書では、原子力安全・保安院と内閣府に設置されている原子力委員会の役割の明確化等、いくつかの問題点が指摘されている。しかしそれにもかかわらず2008年3月に出された原子力安全・保安院のプレスリリースでは、高い優先度として指摘されていた規制機関の改善点を明らかにせず、日本の実績や賞賛すべき点だけを示している。
もちろんIAEAは直接的に津波に対する備えの不備を指摘していたわけではなかった。しかし一事が万事、他者からの指摘を過小評価しようとする姿勢が原子力安全に係る各種の備えに対する緩みを生み出し、事故への遠因となっていったのは確かだと思われる。
もともと日本は原子力先進国として、国際社会の中で原子力安全規制の「優等生」を自負していた。そのため、日本の考える国際関係とは、受ける側ではなく与える側に立ったものであった。そのような背景もあり、日本が原子力国際体制の観点からは、国際レジームとの整合性に最低限配慮はしながらも独自の論理の中で発展していった「ガラパゴス」のような状態にあったと考えられる。
【診断士的学び】
自分たちがトップランナーだという慢心は破滅への第一歩。緩まずに世界市場の動向をモニタリングすべし。
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