『太陽は動かない』~この世で最も価値があるもの | 中小企業診断士グループ“YTD”のブログ

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太陽は動かない/幻冬舎

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新油田開発利権争いの渦中で起きた射殺事件。AN通信の鷹野一彦は、部下の田岡と共に、その背後関係を探っていた。産業スパイ――目的は、いち早く機密情報を手に入れ高値で売り飛ばすこと。商売敵のデイビッド・キムと、謎の美女AYAKOが暗躍し、ウイグルの反政府組織による爆破計画の噂もあるなか、田岡が何者かに拉致された……。いったい何が起きているのか。陰で糸引く黒幕の正体は?
(「BOOK」データベースより)

ゆんたくです。

ルームシェアをする若い男女を描写した「パレード」、日比谷公園を舞台にした芥川賞受賞作「パーク・ライフ」等、時代の空気を描くのに長けた吉田修一が本作では一転スパイ小説に挑んでいる。

この作品のテーマは登場人物の一人である大物政治家の言葉に集約されている。
「この世で最も価値があるものは情報だ。情報は宝。宝探しに秀でた者だけが世界を制する。」

それではなぜ情報には価値があるのだろうか。
身もふたもなく言ってしまえば、情報格差を利用することで、他人を出し抜き、金儲けできるからに他ならない。

金儲けに直結する情報という意味でもっともイメージしやすいのは、株のインサイダー情報だろう。ある会社の株式の上下降を決定づけるような内部情報を手に入れることが出来れば、それを利用して利益を得ることができる。

ただし、この小説が扱う“情報”はそんな小さなスケールのものでは無い。
数年後の世界のエネルギー市場の覇権争いを決する上で鍵となる情報なのだ。それは従来の太陽光の発電効率を何十倍にも高める「宇宙太陽光発電」に関する技術情報だ。

主人公たちは巨万の富を生む情報を手に入れるために手段を選ばない。
もともと情報はその性質上、瞬時に広範囲に伝搬することができるため、優位性を保てる期間は極めて短い。また情報は人の脳に記憶として残るため、一度漏れてしまった情報の拡散を防ぐためにはその者を脅し上げるか、“消す”しかない。
必然的に情報をめぐる争いはスリリングで、血と汗にまみれたものとなる。

情報共有だとか情報創造だとか、企業内で使われているそんな生ぬるい語感とはかけ離れた強烈な重みを持つ情報の価値について考えさせられる傑作だ。


【診断士的学び】
市場の行く末を決定づけるような情報を得るためには相当な労力や犠牲やを伴うが、成功すればそれに見合った見返りを得ることができる。


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