個体発生は系統発生を反復するという説を唱えたのはエルンスト・ヘッケルだ。

 

彼が1899年に書いたDie Welträtselは、1906年に「宇宙の謎」というタイトルで邦訳され出版された。

 

九州大学の福元氏によると、この本は、1880年にデュ・ボア・レーモンによって提唱された「宇宙の七つの謎」を解決する目的で書かれていたそうだ。

 

ヘッケルの主張する個体発生と系統発生は、生物が受精卵から成長し、個別の形態や機能を持った個体となる過程である個体発生と、生物が進化の過程で種の変化や多様性を生じる過程ある系統発生のことである。

 

WIKIによると、ヘッケルは「個体発生の急速かつ短縮された経過の間に、先祖が古生物的発生の緩やかな長い経過の間に遺伝および適応の法則に従って経過した重要な形態変化を繰り返す」と書いてある。

 

平たく説明すると、昔(今でもあるかどうか不明だが)、理科室で見たような、人間が受精したときに魚から人間の形に変化するという系統図のことである。

 

ヘッケルは、個体発生と系統発生を繰り返すように、生物は進化したのだという。ダーウィンの進化論にある自然淘汰による進化説は取らない。

 

ヘッケルの「宇宙の謎」でも個体発生と系統発生について述べているが、発想がとてもユニークだ。なぜなら、ヘッケルは、進化の理論を生命の進化だけでなく、宇宙の進化にも適用しているからだ。

 

ヘッケルは、スピノザの宇宙の実体の考えから、エネルギーと物質が同一のものであるという発想を生み出した。彼はこの相互互換性に基づいて、個体発生と系統発生の理論を宇宙の進化に適用し、宇宙全体が物質とエネルギーの進化によって成り立っていると主張した。

 

ヘッケルの視点では、個体発生と系統発生が生物の進化を支配する法則であり、同様に物質とエネルギーの相互変換が宇宙の進化を指揮する法則であると考えられている。

 

これによって宇宙の謎を解明し、物質と力の本質についての問題を解決しようとした。

 

宇宙の進化は、物質とエネルギーの相互変換によって推進される。物質がエネルギーに変換され、さらにそのエネルギーが再び物質に変換される過程が進んでいくことで、宇宙は進化し形成されていくと考えた。

 

このアイディアは、哲学的であり、科学的根拠があるわけではないが、特殊相対性理論の質量とエネルギーの等価性が発表される前に、物質とエネルギーの相互変換を唱えていたということは、興味深い。

 

ヘッケルの「宇宙の謎」は科学図書館から出版されている。

梅雨で部屋にこもるなら、大正ロマンを感じつつ、「宇宙の謎」を読んでみるのも楽しいのではないだろうか。