うーん。久しぶりになんだか面白かったとか、興味深かったという気持ちになりました。

マウリッツィオ・ベニーニ指揮の《夢遊病の女》でした。

せっかく24ー25のシーズンの幕開きなのですから、しっかり聴きたいと思いましたので、今回はゆるーくゆるーく午前中を過ごし、夕食もしっかり摂って、このオペラに臨みました。

先日の指揮者のベニーニさんのお話や、突然お話に来てくれた主役のお2人、カヴァーの方の熱演。そんな気持ちが残っていますので、体調を整えて聴きたいと楽しみにしておりました。

 

シーズンの開幕だったので、ちょっといつもと違う服装をして楽しみたいという気持ちはあったのですが、現実はそこまでの精神的な余裕がなく、きっと家に帰り着くのは遅くなりそうでしたし、雨も降る予報が出ておりましたので、申し訳ありませんが、ちょっとそこまで買い物へぐらいの格好でした。

 

しかし演奏は良かったのです。

この《夢遊病の女》を聴いて興味が続き、最後までその演奏を楽しんだという気持ちになったのは、初めてのような気がします。

だいたいあまり聴く機会も少なかったのだと思います。

 

やはりあのクラウディオ・ムスキオさんの鼻の高い立体的な顔立ちから発せられる声は素晴らしかったのです。

イタリアの方なのですが、今はシュトゥットガルトの歌劇場で歌われていて、つい先日もこのアミーナの役をお歌いになったのだとのこと。

彼女の頭声は立派にドイツもののオペラも歌うことができると思います。

美しく、自然に流れていくお声です。

その声がストレスなく響いて伸びていくので、聴いている方も自然にこの声を捉えて音が消えていく先の先まで聴いているのです。

こういう発声で歌われる修練を積んでここまでこられた方なのだとものすごく嬉しく思いました。コロラトゥーラの技術も美しく、この世のものではない夢の中にいるアミーナの感じがよく出ていたと思います。

それとは全く、違った形のアントニーノ・シラグーザさんのテノールのフルボイスは、もうその声だけでこの方の存在感を保っていました。

ロッシーニのペーザロのフェスティバルから、ファン・ディエゴ・フローレスさんがデヴューした時、あっと驚いた高音をフルボイスで出すテノール。

このシラクグーザさんも、そういった出し方をマスターしてここまでキャリアを重ねてきた方なのですね。

時々、若い方が「これでもか」と出される時よりは少し大変そうかなと感じる部分もあったのですが、そういったところも技術力でクリアしていかれるのです。

若いというより少しご年齢が高めだとは思っておりましたが………

 

カーテンコールのときに何度かお辞儀をされた後、いきなりオーケストラが、「ハッピーバースデー、トゥーユーというメロディーを演奏され、字幕のところにシラグーザさんが10月5日に還暦を迎えられるのだという文字が流れました。

思わず、私もちゃんと歌いましたよ。

こんな素敵な演奏をしてくださったのですから……/

 

心から.   Tanti  auguri  !  と思いました。

 

ムスキオさんもあの屋根のひさしのようなところに立って、命綱もなくふらふらとして歌われる最終場面はハラハラドキドキ。最後は本当にマリア様の昇天のような気持を見ているような気がいたしました。

 

あれは実際にご覧いただき、そしてまたお聴きいただき、味わってご覧になったら良いと思います。

 

指揮者のベニーニさん毎朝オペラシティーでエスプレッソだったかな?カプチーノだったかな?お飲みになってから、劇場に入られるとのこと。

今回の座席は自分でも忘れていたのですが、開幕のオペラだったので、1ランク上の座席で、2階のバルコニーで、指揮者の指揮が本当によく見えました。歌への細かい指示も振っていらっしゃいました。やっぱりこうやっていろんなことを見ることができる座席も素晴らしかったのだと思います。

 

こんな条件が重なって今回はとても心弾んだ聴きどころの多い開幕演奏でした。

………行って良かった。