自宅の最寄駅の隣の駅に直結している、ホールです。

昨日は雨が降ったり止んだりする忙しい天気でしたので、駅から繋がっていると少々遠い感じでも得した気分になるから不思議です。地下鉄の駅から隣のビルのそのホールへ,、エレベーターでそのままいけるので便利なのです。特に雨が降ったり止んだりしているような天気の時はとても嬉しいのです。

 

14:00からのコンサートでした。開場が13:30とありましたので、その時間に参りましたが、まだ開場しておりません。下の階のロビーや、入り口のところが集まってきた人で一杯になってきていました。

会場の調整が遅れているのでということでしたが、ピアノの調整か、演奏者のなんらかの調整がうまく行っていなかったのでしょうか?

 

アンリ・バルダさんを実は私は存じ上げなかったのですが、「知る人ぞ知る」巨匠とのこと。

プログラムによりますと、

 

〜ヨーロッパの伝統を受け継ぎ、エレガントで真摯な稀有のピアニスト。

当代無比の演奏は、多くの芸術家たちや音楽家たちの尊敬を集めている〜

 

とのこと。

 

しかしもっとびっくりしたのは、いつもこのホールのコンサートにはプロデューサーからという解説があるのですが、その中身です。今までこの方を呼んでリサイタルをした時のエピソードが載っておりました。

今回が4回目とのこと。

1回目の時、いつもこのシリーズのコンサートは演奏が終わった時、花束を渡すのですが、この方は「音楽に関係ないものをステージに持ち込むな……」と怒り出したとのこと(したがって今回はもちろんなし……)

2回目の時は、ピアノの中のあるピアノ線の音が納得できないということで、そのピアノ線をライターであぶるように調律師に指示をしたとのこと。

 

その作業を見ていたホールの担当者がびっくりして大騒ぎになったとのこと。

この調律師の方はそのメーカーのピアノのかなり高いグレードの調律師で、そのピアノの会社もその措置に関しては大丈夫とのことで、ことなきを得たとのこと。

3回目の前回は間際になってかなり大幅な曲目変更があったそうで、多数の苦情を受けることになったとのこと。

 

このようにかなりリスクを伴うピアニストだけれども、それを覚悟しても演奏してほしいピアニストであるとのこと。

 

なるほど………

【プログラム】

モーツァルト  :  ロンド イ短調   K.511

 

                       :  ピアノ・ソナタ  イ長調 K. 310

 

ショパン  :    ピアノ・ソナタ  第2番  変ロ短調  「葬送」

 

……………休憩 ………………

 

ラヴェル  :    ソナチネ

 

                :    クープランの墓

 

〔アンコール〕

 

ショパン   :  ノクターン 第15番  へ短調  Op.55 ー1

                 :  ノクターン 第3番  ロ長調  Op. 9ー3

                 :   子守歌    変ニ長調  Op. 57 

  

はっきり言って、今流行りの若い人たちの演奏とはもう最初のモーツァルトで ガーンと違っていました。美しい繊細な音というのとは全く違った、我が強い音だなあと感じる演奏でした。

隅々の音まで弾いている響きを感じ取ろう、余すところなく感じ取ろうと言った意志の力が働いているのです。割合モーツァルトにしては普通よりペダルをよく使われるなあと感じましたが、そのフレーズの一つ一つのアーティキレーションが優れていると思いました。

さっと表情を変える素早い動き、音の色がさっと変わるわけで、聴いていて飽きない面白さがあるのです。こんな演奏にもしかするとお目にかかったことがないような気がいたしました。

こうやってまずプログラムを並べたのは、その驚くべき探究心、チャレンジ精神です。

調べてみましたら1941年生まれとのこと。

今年83歳になられるわけです。

実は、ショパンの〈ソナタ〉と、ラヴェルの 〈クープランの墓〉で1回ずつ止まってしまうというアクシデントがあったのです。

気力ならびに、演奏は巨匠の風格を備え、こう弾きたいという気力に溢れているのです。

そういった時に自分に驚いているというか、そういう自分に腹を立てているという感じはありました。

きっとそういったことがないようにかなりな練習量をこなされたように思います。

しかし、自分の中からそういった音が自分の中から消えてしまわないように、物凄いスピードで駆け抜けていっているように思いました。

誰よりも自分の演奏に厳しい方のようにお見受けしました。

きっとそういった意味もあったのでしょう、ゆったりしたアンコールのノクターンはそういった自分の演奏を深く感じていたように思います。

このアンコールは自分としっかりと向き合い、その一つ一つの音をいとおしむ気持ちが伝わってきた演奏でした。